書評『日本成長戦略 40歳定年制』:生き抜くスキルを磨くセーフティネット --- 城 繁幸

2013年04月13日 11:32


日本成長戦略 40歳定年制 経済と雇用の心配がなくなる日

昨年、政府の国家戦略室フロンティア分科会が“40歳定年制度”を提言して話題となった。どうも「40歳で全員クビになるんじゃないか!」というイメージだけが疾走してしまった感があるが、本書はその提言者自身による“40歳定年”の入門書である。


まず簡単に説明しておくと、40歳定年とは、40歳で全員が定年退職してオサラバするというものではない。40歳で期間の定めのない無期雇用を見直し、1年でも5年でも、または別の20年契約でも構わないので、新たな有期雇用契約を結びなおすというものだ。著者も言うように、8割くらいの労働者は、引き続きそれまでの職場に残ることになるだろう。

ただ、生産性に応じた処遇になるのと、どこか別の仕事でセカンドキャリアをスタートさせたいという人が自由に動くようになる。それだけの話だ。

では、40歳定年制度の本質とは何か。それは、より長くよりよく、より多様に働くために、スキルを再構築するための仕組みだ。

従来の年功序列だと、40歳くらいまで必死に頑張って、それ以降は年功に対するご褒美として、生産性以上の賃金を定年まで保証されるというシステムだった。

それに対し、60歳(65歳になってしまったわけだが)まででペイする報酬システムを見直し、より短いスパンで機能できる報酬制度にしようというのが、40歳定年制度の根幹である。人事制度的に言えば、40歳で区切りがもうけられることにより、会社も個人も、ゼネラリスト的なキャリアパスから、より職務給的なものへシフトするはずだ。

「でもやっぱり40歳でクビになる可能性もあるんでしょう?」という人は、冷静に考えてみてほしい。

・40歳以降、いつ追い出し部屋に送られるかビクビクしている
・若いころいっぱい頑張って成果を上げたはずなのに、40歳以降に報われず
 悔しい思いをしている
・会社にしがみつくため、有給も使わず、残業続き、おまけに数年おきに全国転勤
 させられている
・本当にやりたい仕事は別にあるが、仕方なく与えられた仕事をこなしている

新たな労働市場を生み出し、そこで各人が売りになるスキルを磨くことで、こういった閉塞感の多くは消えてなくなるのだ。40歳定年制度というのは、あらかじめ節目を作り、各自が意識して、そのためのスキルを磨くための仕掛けである。それこそがこれからの時代、最大のセーフティネットとなるだろう。

規制や法律だけでは雇用は守れない。それは、企業が大きく業績を悪化させたり、倒産してしまった場合には、解雇規制があっても人々は職を失ってしまうからだ。雇用や働き方を最終的に守るのは、本人のスキルだ。その本人のスキルが高められるように、政策を考えるべきだというのが「40歳スキル再構築制」の根幹である。

そして、65歳までの超長期雇用、つまり「若い間いっぱい貢献した人のみが40代以降も雇われる価値がある」という雇用スタイルの王道が崩れることで、多様な働き方が可能となる。女性の社会進出が進み、高齢者の労働力も活かされる社会の到来だ。法律で一律に定年を65歳に引き上げる社会とはまったく異なる未来が、そこにはある。

さて、本書の帯に推薦の辞を書かせていただいた縁で、4月24日に著者である柳川先生とトークライブを行うことになった。まだ席はあるようなので、興味のある方にはおススメしたい。きっと活字に出来ないような話も色々と飛び出すはずだ。


編集部より:この記事は城繁幸氏のブログ「Joe’s Labo」2013年4月12日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった城氏に感謝いたします。
オリジナル原稿を読みたい方はJoe’s Laboをご覧ください。

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