マネー至上主義を象徴する金相場の急落 --- 岡本 裕明

2013年04月17日 05:00

先週金曜日の金(ゴールド)相場の急落は月曜日にパニック売りを引き起こしました。金曜日の朝方の時点ではオンス当たり1550ドル以上つけていたところ、キプロスで金売却の可能性のニュースが伝わり一気に1500ドルを割ると月曜日は朝方の時点で1400ドルもあっさり割り込み、下値が見えない状態になっています。

今日はこの急落の原因について考えてみます。


結論からすれば下落理由は中期的な理由と短期的理由の複合の結果ではないかと思います。

まず、もともと金が買われてきた理由は欧州の金融危機など金融システムに対する不信でした。そしてインフレへの期待から金利がつかない金が代替通貨として選択されてきました。ところがドラギマジックなどで欧州危機がひとまず収まり、金融緩和はワークし、アメリカ経済は安定感を増し、結果として米ドルはユーロや円に対して強含む結果となりました。一般に指標としているのはドル建ての金価格ですからドルが強含めば当然、金の価格は弱含みます。

この状態の中、期待したインフレは発生せず、景気は回復してきたことでアメリカFRBは金融緩和の出口議論すら出てきたことが中期的に金価格が懸念された理由です。合わせてゴールドマンサックスなどが金の先行き見通しについて弱気になったこともそれを増長しました。

そしてその直接的な引き金を引いたのが上述したようにキプロスの金売却の噂でした。キプロスはご存じの通り、先日、金融支援をEUなどから受けることになったのですが、同国は産業らしき産業はなく、結果として国の資産である金を売却しないとやりくりできないのではないかとみられたのです。そして、それは南ヨーロッパの不振国が同様の動きを見せるのではないかという連想が働きました。これが金曜日の下落の理由です。

次に月曜日のパニック売りですが、前日発表された中国の成長率が年換算で7.7%と予想を下回ったことで中国の金の買い余力が減り、ひいては世界で最も金好きなインドにも波及するのではないかという思惑が思惑を呼ぶ展開となっています。

ではこの金の相場はどこまで下がるのか、というのが当面の疑問点ですが、パニック売りは必ず止まるという前提に立てば一旦はそろそろ買戻しが入る公算はあるかと思います。なぜかといえばキプロスにしろ、中国にしろ、すべて議論や想像の範囲であって実際にそうするかどうかはわからないのです。また、売りから入れば買い戻さなくてはいけないということもありますので早晩落ち着きを取り戻すと思います。

但し、中期的には弱含みであることは事実です。世界のどこかで再び金融システムが壊れるか、インフレが発生するなどの理由がないと金は動きづらいはずです。インフレについては石油の価格がその指標の一つとなるのですが、天然ガスの価格が緩んでいるため、石油の価格も引っ張られる形になっています。中国も政府部門の支出は大きいものの民間部門が明らかにスローになっており、資源の需要は先行き疑問視されています。

一方で、金の最大の需要は国家備蓄資産であり、キプロスのようなケースは例外で、通常は金は買いはすれどそう簡単に売却はしないものです。つまり市場に実弾として大きな売りが出てくるとは本来、想定しにくいのです。

いづれにせよ、代替通貨の呼び声もあった金の価格が一日にして10%近くも暴落するというのは尋常ではありません。本当の通貨であればその国家は破たんしているようなものです。しかも今回の暴落があくまでも噂が噂を呼んでいる点においてマネー至上主義の狂気の沙汰を垣間見ているともいえるかもしれません。

金融緩和によりお金が地球儀ベースで津波のごとく、押し寄せ、引いていくその姿には実体経済とは全くかい離した別次元のマネーゲームを世界の中央銀行が推進しているようにも見えます。G20が今週末に開催されますが、金の暴落について各国首脳はどうささやきあうのでしょうか?

今日はこのぐらいにしておきましょう。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2013年4月16日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。
オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。

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