猪瀬都知事の五輪招致失言の背景を読む --- 岡本 裕明

2013年05月01日 10:02

やってしまったな、というのが私の第一印象です。

東京都の猪瀬知事が先日ニューヨークにいた際のインタビュー記事が27日のニューヨークタイムズに掲載され、候補地のひとつであるトルコを「比較」したことに関してIOCから注意喚起がでました。


まず、その記事のくだりは以下のとおりです。

“For the athletes, where will be the best place to be?” Inose said through an interpreter in a recent interview in New York. “Well, compare the two countries where they have yet to build infrastructure, very sophisticated facilities. So, from time to time, like Brazil, I think it’s good to have a venue for the first time. But Islamic countries, the only thing they share in common is Allah and they are fighting with each other, and they have classes.”

この発言は通訳を通じて行われておりますので本人の発言の意思が確かにきちんと伝わっていない可能性はあります。それを考慮したにしてもこの文章の中には私が読む限り3つの過ちを犯しています。

一つ目は施設やインフラが整備されているところの方が優れているという比較論を出してしまったこと。
二つ目にcompare the two countriesとしているところでもうひとつの候補であるスペイン、マドリッドを端から無視していること。
三つ目に宗教論を出してしまったこと。

通訳が知事の意図を汲みきれず100歩譲って直訳したとしてもこの類の内容をしゃべったことは事実であり、特に三つ目の宗教に関しては通訳が突然アッラーの神というわけではないですからこれは猪瀬知事の失言では済まされないかもしれません。

更にニューヨークタイムズがこの記事をわざわざ安倍首相がトルコに向かうその直前に出したというところが味噌で意図的であるとしか思えないのです。猪瀬知事は作家でもあり、2009年に刊行した本で、東京裁判のA級戦犯の処刑が皇太子明仁(当時)の誕生日である12月23日に執り行われたことは偶然ではないと書いているのですが、今回、その逆で安倍首相を困らせてしまったということになります。

事実海外でのこのニュース反響は大きく、当然ながらトルコ内でも話題になっていることと思います。トルコと日本は経済的に非常に結びつきが強く、今回もトルコに作る原子力発電所に三菱重工らが落札できそうな状況にあることから首相と経済ミッションのトルコ訪問となっているのです。

ではなぜ、猪瀬知事はここまでトルコを意識した発言をしたのでしょうか? それはとりもなおさず、トルコが最大のライバルであり、最有力候補であることは間違いないからです。

このオリンピックの件は私はこのブログで何度も取り上げていますが、オリンピックの趣旨はアスレチックを通じて国や都市の発展を促すことが趣旨であり、基本的には発展目覚しい候補地が選ばれるのであります。時として前回のロンドンのように成熟都市も入りますが、基本的な流れは過去の開催地を見れば一目瞭然です。

トルコは経済成長が軌道に乗っていること、東西文化の接点であることなどから必ずしも安全性や紛争という観点からは満足できる状況にないかもしれませんが、大局的なオリンピックの趣旨にはまさに適合しているのであります。

猪瀬発言はその辺りの気持ちが言葉に出た可能性はあります。

これをどう挽回するか、安倍首相がフォローアップすることにはなると思いますが、宗教を語ってしまったことは背負いきれない重圧となることは間違いないでしょう。9月の開催地決定に向けて厳しい戦いとなるかもしれません。

今日はこのぐらいにしておきましょう。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2013年4月30日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。
オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。

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