金融マジックに左右されない真に実力体力のある企業を目指せ --- 岡本 裕明

2013年05月03日 06:00

もともと日本で始まった金融緩和政策はアメリカ、ヨーロッパに発展的に波及し、その規模は拡大する一方となりました。そして日本も「元祖」金融緩和国として黒田総裁が負けじと金融緩和の規模の拡大で追従しています。


アメリカ経済は2000年初頭のIT業界の成長で大いに盛り上がりましたがそのバトンを受け継ぐ業界はありませんでした。結果として金融緩和がスタートします。それは株と不動産に資金が流入し、金融大国の名前を欲しいがままにしたわけですが、ご承知の通り、リーマ・ショックという副作用があったわけです。ヨーロッパに目を転じればリーマン・ショックのたすきはアイスランドに飛び火し、スペインの不動産バブル崩壊を招きました。

言い換えるならば金融緩和で作り上げたものはバブルであり、実態以上の夢を作り上げた残影ということでしょうか?

一方、企業は低利の社債発行をてこに投資を増やしながらM&Aや業務提携を通じて生き残り策を模索してきました。これはとりもなおさず規模と効率の追求であります。ただ企業が本来主目的とすべき生産活動などの改善、効率化に十分に資金が回っていたかといえば単純な拡大路線やいわゆる「財テク」でおろそかになっていた会社もあったかもしれません。

円安になれば為替を通じて企業の利益は大幅に改善します。これは結構なことなのですが、それが企業の成長ではないということに気がつかねばなりません。つまり、為替は企業の実力とはかけ離れたところの問題であり、企業は為替がどうであろうとも着実に工夫し、成長し、マーケティングを通じて稼ぎ続けなくてはいけないのです。ある意味、為替差益はボーナスぐらいの気持ちであるべきなのです。

アップルやソニーの決算が財務的手法により取り繕われ、きれいに化粧をした決算発表で株主は怒りの矛先を収めてしまってはいけないと思います。むしろ無印良品のようにいつの間にか世界で愛されるブランドとなるような着実な努力をしている企業がどんどん増えてもらいたいものです。

亀井静香氏の中小企業向けのモラトリアム法案がある意味、不評のまま3月末で終了しました。終わった今、改めて考えてみれば、リーマン・ショックで厳しい環境におかれた企業を救う為に政府レベルで救済をするという発想と黒田総裁のもとで行われている金融緩和が同じ着眼点と捉えられなくもない気がしてきました。つまり、デフレ脱却のため、強力な金融緩和を推し進めることにより健全、不健全な企業関係なく、一様に救いの手が伸びるのです。

結果として本来では勝ち残れない企業も為替が味方し、息を吹き返す、ということであれば、純粋な意味での実力があっての企業存続ではない、という言い方も出来ます。

私は何も日本の企業が苦しむべきだ、と言っているわけではありません。ただ、本当に実力のある企業は為替がどんな水準にあろうとも稼ぐ力を持っていることを知るべきだと思います。金融緩和はある意味、企業へのカンフル剤にはなりましたが、金融緩和がここまで長くなると低金利が当たり前ということになり、金利が一般的な水準に戻った際、企業が存続できなくなる、あるいは個人の住宅ローンが払えなくなる、という弱体化の弊害は必ず起きるのです。

90年代、金利を上げるかどうか、という議論があった際、今利上げしたら多くの企業が潰れてしまうとされ、金利引き上げそのものがタブー視されました。最近では利上げの話など全くないわけですからそのようなことを考えもしていないと思いますが、結局のところ、先進国は驚異的な低金利の結果、企業体力は通常時より落ちていると認識することが重要ではないかと思います。

今日はこのぐらいにしておきましょうか?


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2013年5月2日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。
オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。

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