米電子書籍で売れるのは1ドルと3ドル~セルフ出版最新データ

2013年05月13日 10:21

前回の投稿「99円の電子書籍が日本を席巻することは避けられない」で、Kindle等の普及が進むにつれ、99円の作品が日本で中心になると書いたが、間違いであることを認めなければならない情報にぶつかった。セルフ出版(=セルフパブリッシング)の販売支援の専門サイト「Smashwords」の創業者マーク・コーカーCEOが、5月2日にアメリカでのセルフ出版について最新の調査データを発表した。そのデータでは違った側面が見えたためだ。

New Smashwords Survey Helps Authors Sell More eBooks-9


このサイトは、出版までは無料で行ってくれ、売り上げに応じた分配によって、収益を上げている。売り上げから手数料として15%をとるという形でビジネスにしている。ワードファイルかePubのデータをアップロードすると適当にデータ化してくれる。価格設定をした後、これらのデータはブラウザ、Kindle、Apple ibook、Kobo、ePub、PDF、テキストファイル等、読者が購入すると様々なハードウェアで読むことが可能だ。

そして、このサイトを通じてセルフ出版がおなわれている点数は急激に増加している。

2008年 140点
2009年 6000点
2010年 2万8800点
2011年 9万2000点
2012年 19万1000点
2013年 22万0000点(4月まで)

もちろん、このサイトを利用していないで、セルフ出版が行われている書籍も多数存在すると推定できるため、この数値はごく一部であろうと思われる。どちらにしても、セルフ出版の書籍は、ここ数年で、急激に発売される書籍の点数が急増していることがわかる。

■売れる価格帯は1ドルと3ドル

それで、それらのデータのうち12万点の過去11ヶ月のデータから、価格トレンドを分析している。2012年の調査データによると、0.99ドルで発売されているのは、8000点なのに対して、2.99ドルで発売されているタイトルも8000点に及んでいる。1.99ドルの値付けはなぜか売れないという傾向があり、ブラックホールとまで書いている。

これが最新の2013年になると、0.99ドルは2万4000点あまりで、2.99ドルが3万8000点にまで上昇しており(2012年と2013年は調査をした母数のデータが違っているようで一致しない)、2.99ドルが中心になりつつある。また、3.99ドルの作品は、1.99ドルよりも上回っている。全体的に上昇傾向に向かうかも、との予想も立てている。

このサイトを通じた12万点が、11ヶ月の間に全世界への販売を通じた売り上げの合計金額は120万ドル。平均一冊当たり10ドルの売り上げと言うことになるという厳しい現実がある。売れるタイトルは当然のことながら、ごく一部に集中する。上位1000タイトルが、売り上げの半分を稼いでいる。さらに上位500タイトルを1とすると、上位50タイトルは7倍、トップのタイトルは37倍となる。

ついでに述べておくと、無料の書籍は、有料の書籍よりも91倍ダウンロードされるという。iPhoneのApp Storeでも無料のゲームは有料のゲームよりも10倍ダウンロードされるという法則が知られているため、大体近いのかもしれない。

■700枚も書くのーーーーやだ!

また、案外と書いているボリュームが多いことに驚かされる。トップ60位のロマンスタイトルの平均の文字数は、11万2195ワード。日本語は冗長な言葉であるため、英語の約2.5倍になる。約25万5000字。400字詰め原稿用紙で約700枚。大体、日本語の文庫本サイズが300~350枚前後であることを考えると書きすぎだろうと思うのが正直なところだ。でも、12万ワードのロマンスって長すぎだろうと、指摘もしているのでやっぱり長いのだろう。

とはいえ、これは単なるデータに過ぎないので、この数値だけに頼るなとも書いている。20万ワード必要な本ならば、書くべきだと。結局、価格上昇を引き起こしているのは、1冊当たりのボリュームの増大とも連動しているのかもしれない。

案外とセルフ出版には別の側面もある。このサイトを利用しないで販売しているベストセラーになり、ハリウッドに映画化権が買われた「Wool」シリーズ(各1.1ドル)は約1万2000ワード(日本語では400字詰めで75枚)とこの量だと読了に1時間掛からない。そのため、短編ニーズもあるのだろう。こうした多様性があることを指摘もしていた。

既存の出版社にとっては、セルフ出版が広がり、この低い価格が一般化していくに従い、厳しい立場に置かれる可能性を、やはり指摘している。高い価格を維持しようとすると、読者は離れる。一方で安い価格のセルフ出版は、既存の印税より有利な上に販売数の広がりが早い。

ただ、日本の場合は、アメリカほどは恵まれない可能性がある。セルフ出版は、それが可能なプラットフォームが出てこなかったので、アメリカよりも5年あまり遅れてくると思われるが、それよりも、英語圏はワールドワイドに販売できるが、日本は日本語圏にしか、読者がいないため、市場規模が小さい。特に翻訳が難しい、小説等のハードルは高い。

どの当たりの金額でセルフ出版で出ている書籍の量と価格を、日本の読者が受け入れるのかは、今からというところだろう。

新清士 ジャーナリスト、作家@kiyoshi_shin
めるまがアゴラにて「ゲーム産業の興亡」を連載中

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