整ってきたシャープ復活のお膳立て --- 岡本 裕明

2013年05月16日 06:00

興味ある人にとってはある意味待ちに待ったシャープの中期経営計画。内容的にはほぼ想定どおりではないでしょうか? 一部、不明瞭な点を含め、今後の課題について考えてみたいと思います。

まず、同社の2013年3月期は営業黒字を確保し、連結最終損益もプラスとなりそうで、銀行団との最低限の約束は果たしました。これにより、9月の転換社債満期に伴う2000億円の確保もついたと明言されています。多分ですが銀行団からの融資枠の確保に関する大枠の調整が進んだということかと思います。


今後の向かう方向については赤字の元凶であった液晶と太陽光発電につき、大幅な事業の見直しを図りながら生かせるところは生かし、切るところは切るというシャープにしては実に大胆な判断を下しました。これが出来たのは人事政策によるところが大きいでしょう。

人事政策とは紛れもない片山会長の退任であります。元社長の町田勝彦氏の意向を受けて片山路線は液晶一本打法を更に推し進めたわけですが、結果としてそれは裏目に出ました。ただし、私の見立てとしては片山氏は町田氏に社長を任された関係にある以上、NOをいえず、町田路線の踏襲しかなったはずで当時手がけ始めていた堺工場も「片山、お前に任せるぞ」というぐらいの感じではなかったのではないでしょうか?

つまり、町田ー片山ライン及び社内派閥はある程度刷新する必要はありました。次に奥田隆司社長の退任はやや早いとも思われましたが、日経には一週間ぐらい前にそのニュアンスの記事が出ており、経営の舵取りが出来ず、社内混乱を招いた責任をとる形にする可能性は読み取ることが出来ました。

役員人事について、奥田社長は銀行からの影響を否定しています。が、この記事をその言葉通りに取ることはほぼ意味がなく、銀行団と会社再建に携わった人ならばどういうやり取りがあったかということはたやすく想定できると思います。つまり、役員の大幅な刷新なくして銀行は首を縦に振らないという空気は以前からあり、片山会長は自主的にそれを汲み取ったということなのでしょう。実にこのあたりは日本的な動きであります。

今後、実質的には銀行主導の経営再建が進みます。三菱UFJとみずほから役員を受け入れるわけですが、問題は両メガバンクの利害が時として一致しないことが生じる可能性があり、結果として経営改革の足を引っ張ることがないかどうか、このあたりが日本式経営として注目すべき点かと思います。

資本増強については今回の中計では触れられていません。もっとも気になるところでありましょう。まず、新規出資をしたクアルコム、サムスンに更なる追加増資を依頼することは戦略的にも可能性的にも低いと思います。クアルコムは技術提携の意向でありますし、もともと特定の企業との密接な関係を好まない会社ですから同社からのこれ以上の出資は考えにくいところです。

次にサムスンですが、液晶を購入する側が103億円以上も出資することにどれだけのメリットがあるか、と考えればシャープの技術をどれだけ取り込めるか、という点に絞り込まれてしまいます。その点はむしろ、シャープ側がかたくなな態度に出ると見ています。つまり、こちらもこれ以上の資本関係を結ぶのは微妙な雰囲気ではないでしょうか?

特定の企業に出資を仰げなければそれ以外の増資、公募も当然検討手法に入ってくるのかもしれません。

ところで今となっては名前すら出てこなくなった鴻海精密工業。郭会長は今頃、じたんだを踏んでいるかもしれません。なぜならば、株価は5月14日終値で531円。まさに交渉をしたベースの金額まで戻ってきたのです。まさかの円安に同社の再建に向けた努力の結果、株価が一時期100円台に落ち込み、市場からの退場までささやかれた逆風を乗り越えてきました。私は鴻海との離別は大正解だと思っています。

シャープには優れた技術とユニークさを持ち合わせています。それゆえ、その力の発揮の仕方ではいくらでも光り輝く会社になると思っています。再建にはまださまざまな茨の道が残っているはずですが、少なくともいくつかの大きな邪魔者はなくなった気がします。応援しております。

今日はこのぐらいにしておきましょう。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2013年5月15日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。
オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。

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