円安でも製造業の国内回帰はないその理由 --- 岡本 裕明

2013年06月05日 12:18

日経電子版の今週の読者アンケートは「円安で工場回帰は起きるか」というテーマです。これは実に奥深い話だと思いますので私の考えをアンケート集計締め切り前ですが書かせて頂きます。

私はずばり、円安になっても製造業は日本には戻らないと見ています。理由は消費される場所で製造することによるメリットの方が高いからであります。6重苦という言葉を理由に日本企業が海外に進出し、空洞化を招いたとされていますが、私はそれはむしろ後付けの理由であって、もともとは人口減で総需要が減っている中、企業の成長は海外に行くしかない、というバックグラウンドがあったのだろうと思います。


その先端を行ったのが自動車産業でした。その影響力は多大でした。なぜならば関連の部品メーカーを含め一気に外に出て行ったわけです。勿論、日本国内の生産を止めたわけではありません。が、日産自動車のように工場を閉鎖したところもあるし、トヨタでも国内雇用重視といわれながらも国内生産は徐々に減ってきています。門外不出といわれたレクサスの製造は現在カナダのオンタリオ州でSUVが作られているのみですが、今般、ES350をアメリカに製造移管します。もともとES350は国内未発売のミッドサイズのセダン。九州工場で作っていたものですが、全量輸出の意味が問われ始めたということでしょう。

日本の製造業の立ち位置の変化をもたらしたきっかけのひとつに中国での反日運動があったと思います。これをきっかけに日本企業は目覚めてしまったことがあります。それは中国一辺倒のリスクと親日の東南アジア6億の人口を擁する国々の市場であります。勿論、それまでにも既に日本企業はタイを始め多くの東南アジアに進出していましたが最近の盛り上がりはそれまでのペースをはるかに凌駕するものであります。

結果としてそれらの国では日本製品が溢れている状況が続き、市場の成長性はまだまだ高いと見られているのです。6億の人口といえば中国の約半分であるもののアメリカの2倍、日本の5倍もあるのです。それらの国々へ進出することで中小企業を含め、海外進出の経験を通して海外での生産メリットをより理解させる結果となるでしょう。つまり、今までの日本企業は「出ず嫌い」であったのです。理由は人材、語学力などむしろ人事問題を含む経営方針だったのでないでしょうか?

もともと90年代初頭のバブル崩壊の際、日本企業は銀行主導の下「本業回帰」が声高に叫ばれました。その本業回帰には海外からの撤退が含まれていました。銀行は冷徹であり、「お宅の海外事業は儲かっていないですよね、ならば撤退してください」の一言でした。これが日本の海外での市場シェアを大きく落とし、韓国勢などに付け入る隙を与えてしまった一因であることはその間、ずっと海外にいた人間だからこそはっきり断言できるのです。

では日本は空洞化が進むのか、といえばそういうことでもないと見ています。日本では技術やノウハウを売るビジネスで儲けていく時代がやってくると見ています。少子化もそれが与件であればそれでも日本が食べていけるように対応するだけの話です。貿易赤字は膨大になるかもしれませんが、所得収支がそれを上回る黒字になればよいだけの話です。このあたりが新聞の紙面に惑わされやすいところではないでしょうか?

日本の未来はまったく別の形で進化する、というのが私の思う20年後の日本であります。

今日はこのぐらいにしておきましょう。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2013年6月4日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。
オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。

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