内部留保って何?

2013年06月25日 08:24

毎年、決算が発表されるころになると「大企業の内部留保が多すぎる」という話が出てきます。たとえば共産党は「大企業の内部留保は10兆円超ふえたので賃上げしろ」と言っています。内部留保というと、いかにも何にも使わないで会社の中に貯め込んでいる現金みたいな印象を受けますが、そうではありません。

会計上は「内部留保」という項目はなく、「利益剰余金」といいます。これは純利益の中から配当や役員報酬などを引いたもので、主として設備投資に使われます。上の図はWikipediaのちょっと古い数字(財務省法人企業統計)ですが、利益剰余金のうち、ほぼ半分が設備投資です。そもそも利益剰余金は、賃金を払ったあとの利益ですから、そこからさらに賃金を払うというのは賃金の二重取りです。これは株主の資産ですから、「もっと配当しろ」というなら筋は通ります。

たとえば100億円かけて工場を建てた場合、10年償却で今年10億円の費用が計上されたとすると、あとの90億円が利益剰余金ですが、これは金庫に眠っているわけではありません。共産党のいうようにそれを賃金に分配しようとすると、工場を売らないといけない。たとえばソフトバンクの4000億円の利益剰余金のほとんどはスプリントの買収に使われるはずで、負債も莫大だから賃金に回す余裕なんかありません。

ただし、この図にも見られるように、日本の企業の利益剰余金の半分近くが現金や預金として保有されていることには問題があります。これが日本経済の活力を失わせる貯蓄超過です。そもそも企業はお金を借りて投資するのが仕事なんですから、預金が150兆円もあるなんておかしい。

その最大の原因は有望な投資機会がないからで、デフレとかインフレとかは関係ありません。因果関係は逆で、企業の資金需要がマイナスになっているために貸出金利が下がり、政策金利がゼロに貼りついてデフレになるのです。それは国内市場が縮小し、法人税が高く、雇用規制がきびしいからです。

だから日本の会社の問題は「内部留保」が労働者に分配されないことではなく、国内の設備投資に回らないことなのです。これが投資として使われるようになれば、それは他の企業の所得になり、日本経済の活力を増すでしょう。そのためには、法人税の減税などによって企業の投資意欲を増すことが大事です。

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池田 信夫
アゴラ研究所所長 青山学院大学非常勤講師 学術博士(慶應義塾大学)

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