内部留保って何?(アーカイブ記事)

共産党の志位委員長が「共産党政権になったら企業の内部留保を絞ってあげる」と発言して、「共産党はこわい」と話題になっていますが、これは昔からある話です。2013年6月25日の記事の修正版です。

Q1. 内部留保って何ですか?

内部留保というと、いかにも何にも使わないで会社の中に貯め込んでいる現金みたいな印象を受けますが、そうではありません。会計上は「内部留保」という項目はなく、利益剰余金といいます。これは純利益の中から配当や役員報酬などを引いたものです。

Sankeibizより

図1

Q2. 内部留保は余ったお金なんですか?

内部留保は現金とはかぎりません。これに対応するのは図1の左側(資産)の中の「現預金」だけではありません。たとえば100億円かけて工場を建てた場合、10年償却で今年10億円の費用が計上されたとすると、あとの90億円が利益剰余金ですが、これは金庫に眠っているわけではありません。

Q3. 内部留保のうち、現金はどれぐらいあるんですか?

図2のように、現金として保有されているのは利益剰余金450兆円の半分ぐらいで、あとは土地・建物・設備などの固定資産が多い。これを売ると、企業は生産ができなくなります。

図2

Q4. 内部留保を従業員に分配して賃金を上げろと共産党はいってますが?

利益剰余金は、賃金を払ったあとの利益ですから、そこからさらに賃金を払うのは賃金の二重取りです。これは株主の資産ですから、「もっと配当しろ」とか「自社株買いしろ」というなら筋は通ります。

Q5. 内部留保に課税するってどういう意味ですか?

図1でもわかるように、内部留保(利益準備金)は負債の内訳なので、借金に課税することはありえません。それに対応する資産に課税する資産課税は考えられますが、これは法人税を払ったあとの利益に課税する二重課税になります。

Q6. 二重課税はいけないんですか?

二重課税は、酒税と消費税とか、自動車重量税と消費税とかいろいろあり、財務省も否定できないようですが、税制の原則としては好ましくありません。特に法人税は、税引き後利益から払う配当に所得税をかけるので、三重課税になります。

Q7. 内部留保に問題はないんですか?

日本の企業の利益剰余金の半分近くが、預金として保有されていることには問題があります。これが日本経済の活力を失わせる貯蓄超過です。そもそも企業はお金を借りて投資するのが仕事なんですから、預金が200兆円以上もあるなんておかしい。

Q8. なぜ企業が貯蓄するんですか?

その最大の原因は有望な投資機会がないからです。これが「デフレのせいだ」というのは因果関係が逆で、企業の資金需要が減るために貸出金利が下がり、ゼロに貼りついてデフレになるのです。それは国内市場が縮小し、法人税が高く、雇用規制がきびしいからです。

Q9. 日本の会社はどうすればいいんですか?

日本の会社の問題は「内部留保」を労働者に分配しないことではなく、国内投資に回さないことです。これが投資として使われるようになれば、それは企業の収益も上がり、賃金も上がるでしょう。

Q10. 政府は何をすればいいんですか?

企業貯蓄を減らすことが目的なら、高市早苗さんの提唱する預金課税(預金にマイナス金利をつける)も一つの方法ですが、これは取り付けを引き起こして金融危機をまねくので危険です。

大事なことは貯蓄を減らすのではなく、投資を増やすことです。そのためには投資減税も必要ですが、アジアでいちばん高い法人税を減税して空洞化を止めるとか、海外から半導体工場を誘致するとか、できることはたくさんあります。

コメント

  1. […] る」と発言して、「共産党はこわい」と話題になっていますが、これは昔からある話です。2013年6月25日の記事の修正版です。 大企業にとって内部留保は、人…このサイトの記事を見る […]