UNIDOの中国人事務局長の誕生は朗報か --- 長谷川 良

2013年06月27日 09:34

大方の予想通り、国連工業開発機関(UNIDO)の新事務局長に中国のエリート官僚、李勇(Li Yong)財政部副部長が第1回投票で選出された。当選には工業開発理事会(IDB)の53カ国中、3分の2以上の支持が必要だが、李氏は37票を獲得した。事務局長選には、李氏のほか、ポーランド、イタリア、アフガニスタン、カンボジア、タイから5人の候補者が立候補していた。なお、李氏の4年の任期は今月28日のUNIDO総会特別会期で承認を受けて正式にスタートする。

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▲加盟国から当選の祝辞を受ける李勇氏(2013年6月24日、撮影)


IDBが開催された国連Mビル1階の会議前にはUNIDO会議としては珍しく、カメラ・チームを含むジャーナリストたちが待機していた。その半分以上は中国人ジャーナリストたちだ。中国ジャーナリストがウィーンの国連の会議でこれほど多く集まったことはなかった。

あれも、これも李勇氏のUNIDO事務局長選勝利を北京に速報するためだ。国際原子力機関(IAEA)の天野之弥事務局長が日本人だということで理事会に多い時には10人以上の日本人ジャーナリストが集まる。同じ現象だろう。

第1回投票で早々と当選した李氏は加盟国代表から祝辞を受けていた。その中でもイランのソルタニエ大使の喜ぶ姿は際立っていた。「これでUNIDOは中国とイラン両国で主導できる」といった計算があるのかもしれない(「UNIDOの乗っ取りを図る中国」2013年3月22日参考)。

UNIDOでは過去、米国、オーストラリア、カナダ、英国、ニュージーランド、フランスなど欧米の主要加盟国が次々と脱退し、専門機関として存続が問われてきた。特に、米国が脱退してからは、世界のメディアもUNIDOの動向は報道しなくなった。UNIDOで記事となるのは、その腐敗と不正問題だけだ、といわれるほどだ。

中国人外交官と話す機会があった。同外交官は「李事務局長は停滞してきたUNIDOの再建という大きな課題を担うことになる。喜んでばかりいられない」と述べていた。正直な感想だろう。

李勇次期事務局長には最大分担金を拠出する日本と連携して、UNIDO本来の目的、アフリカ、アジアの開発途上国支援にその力を発揮して頂きたいものだ。 

いずれにしても、中国人事務局長の誕生はウィーン国連にとって朗報だろう。李事務局長の一挙手一投足を報道するため多くの中国人ジャーナリストがUNIDO会議をフォローするだろうからだ。「UNIDOが活気を取り戻すかもしれない」といった淡い期待も聞かれる。その一方、「欧米主要国の不在をいいことに、中国はアフリカ支配の野望実現のためにUNIDOを利用していくだろう」という懸念の声もある。


編集部より:このブログは「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2013年6月26日の記事を転載させていただきました。
オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。


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