Gay, Stock, and common sense

小幡 績

世の中は変わった。

同姓婚が、US Supreme Courtで認められ、米国株式市場は、米国GDPデータの予想外の下方修正で、大幅上昇した。

conservativeな人々からすれば、どちらも倒錯した現象だが、現代社会においては、当然のことで、常識的な結果だ。

common senseとは誰が決めるのか。誰にとってcommonなのか。それが問題だ。


世の中の常識は変わるものである。

大学生のころ、ひたすら経済学を勉強していたときに、ケインズをはじめ、多くのイギリスの経済学者が同性愛者であることを知り、驚愕して、耐え切れず、ゼミのときに、なぜイギリスの経済学者に同性愛者が多いのか、根岸隆教授に質問したところ、先生は、ニコニコしながら、成熟した社会ほど、同性愛に対して寛容なんだよ。米国はまだ遅れていて、本当の成熟国じゃないのかもしれないね。と言われた。

私は、ますます驚愕し、日本はいかに遅れているか、ということが身体に刻み込まれた。

そして、20年余りが過ぎ、日本では、テレビにいわゆるおねえ系タレントがはびこるようになり、昼の番組では、素人のおねえ系のコンテストも日常的に行われるようになった。

新宿二丁目は、世界一素晴らしい街として有名になり、秋葉原よりも価値が高いと一部で、しかし、世界中で言われるようになり、聖地となった。

そういう意味で、日本社会は寛容で、柔軟だ。そして、これは、金融市場に対する理解においても進んでいると言える。

一般の人々は、株とは、日常生活とは無縁で、さらに、日常の経済活動とも無縁で、バブルかギャンブルかどちらかであり、まともに考えてはいけないものだという深い理解をもっている。

しかし、日本が遅れているのは、専門家で、制度的には、同性愛者は英米に比べれば、キリスト教国でもないのに、権利が弱い。株式市場の解説者として出てくる専門家ほど、株式市場の本質をまったくわかっていない。だから、専門家ほど、欧米の成熟した投資家の揺さぶりに面白いようにやられる。

今日も、欧米の投資家は、米国のGDPが実はもっと悪かった、と言うニュースに狂喜乱舞し、株価を押し上げた。FRBの量的緩和は継続される見込みが強まったからである。欧州もECB総裁のドラギの、欧州経済は弱い、金融緩和は継続する、ということにポジティブに反応し、大幅上昇となった。ユーロや国債市場は下落したから、株式市場だけが倒錯していることになる。

成熟した国々の投資家は、株価が実体経済を反映しているなどという、いまや教科書からも消えようとしているおままごとのような教えを、建前においてすら尊重しない。堂々と、株価は金融政策で決まる、と正面から捉える。もはや、それは常識だから、正面から捉えるというような大げさな言葉でなく、空気のようなものなのだ。

この常識についていけない、仲間はずれの日本の投資家たちは、株式相場にもついていけない。

本来の日本人が持っている思慮深さ、思考の柔軟さ、常識の変化に対する寛容さを、株式投資家は身につける必要がある。

そして、そのときこそ、異次元の金融緩和というものが、何の意味もない、おままごとの擬似的な株価操縦政策であることが、常識として空気のように受け入れられるようになるだろう。すでに、一般の人々はそれに気づいているから、後は専門家が素人から学ぶだけのことなのだが。