グローバル人材ならまずは韓国を直視すべき

2013年07月01日 10:05

先日、東大の本屋に立ち寄ったら、『韓国のグローバル人材育成力』という新書が平積みにされていた。

韓国のグローバル人材育成力 超競争社会の真実 (講談社現代新書)
韓国のグローバル人材育成力 超競争社会の真実 (講談社現代新書) [新書]


安倍政権でも、大学入試や国家公務員試験にTOEFLの導入が検討されたり、海外留学者の増加を目標に掲げたりと、いわゆるグローバル人材の育成に本腰を入れ始めている。私は、ハーバード大学院留学時代に韓国人留学生の多さに直に触れ、自分自身が韓国に留学していた折に、全ての授業を英語で行う外国語高校の取り組みを知り、こと英語教育や海外志向という点では日本よりも韓国の方が進んでいることを実感した。もちろん、英語教育が全てではないし、日本以上に受験戦争が過熱している韓国の教育事情に問題は山積みだか、この分野については韓国から謙虚に学ぶべき点は多いと感じる。

上記の著作は科学技術政策担当の文科官僚が在韓日本大使館に出向駐在した際に、各所を取材した内容に基づいて書かれたもので、大変参考になる。以下その一部を紹介したい。

まず日韓の英語力比較について。「TOEFL(2009年)の韓国人平均点は日本人平均点の1.21倍、TOEIC(2005年)は韓国人平均点が日本人平均点の1.17倍」。経年変化でみても、日韓間のスコア格差は拡大基調にある。受験者数(TOEFL)でも、日本人7.8万人に対して、韓国人13万人と、人口の少ない韓国の方が多い。「日本は受験者の母数が多いから平均点が低いんだ」という反論は、韓国に対しては当てはまらない。

留学生数に関しては、米国大学(2009年)では学部生が3万9100人で韓国が1位、修士課程は1万2280人で3位、博士課程は1万2780人で3位。日本人留学生の数と比べると、学部で2.6倍、修士で3.6倍、博士で7.5倍だ。出身国別順位でいうと、日本は学部4位、修士6位、博士8位になる。ちなみに、修士と博士の1,2位は人口10億人以上のインドと中国で、人口比からすると韓国人留学生数はやはり突出している。グローバル人材育成や留学生数増加を掲げるなら、経済社会制度も母国語の文法構造も似ている韓国の「先行事例」を研究することは、感情的には反発もあろうが、政策の分析プロセスとしては当然と言える。

韓国では1997年に小学3年生以上で英語の必修化が定められた。小学生向けの塾でも英語が一番人気で、小学生を対象にした英語のみが使用可能な「英語村(英語マウル)」がブームだという。母子セットの小学生海外留学も盛んで、その数は1万2千人にもなる。幼稚園での英語教育も標準的で、「英語教育のない幼稚園を探すのが難しい」ほどとのこと。これらの英語教育を担わせるため、在米韓国人などのネイティブ教師をリクルートしており、日本と違って「英語ができない教師」が頑張って変な英語を教えるというわけではない

高校でも、「特殊目的高校制度」のもと、科学系高校や英術・体育系高校と並んで、外国語・国際系高校があり、外国語高校は国語や韓国史以外はすべての授業を英語で行っている。これらの高校からハーバードをはじめとした米トップスクールに多数輩出されている。日本では最近ようやく、ベネッセが米トップスクールを目指す塾「ルートH」を開始し、ハーバード等に合格者を出すようになったが、問題はそれらが学校ではなく高額な費用を必要とする塾によるという点だ。公立高校でも十分に海外トップスクール留学を目指せるような教育環境の充実は必要だと思う。

大学では、韓国の理系トップであるKAISTは学部授業を全て英語で行っている。ソウル大学や高麗大学でも、教授の9割近くが最終学位を海外で取得している。

企業でいえば、代表格のサムスンは、幹部のうち23%が海外で最終学位を取得、研究職では33%だ。TOEICの新入社員ノルマは900点以上で、以前話題になったユニクロや楽天などの基準である700点や800点では話にならない。サムスンは英語だけでなく、入社3年目以降の社員約200人を毎年1年間、世界各地に送り出し、語学研修や地域調査を行わせているが、最近力を入れているのは中東、アフリカ、中南米だ。世界の成長市場を見込んだ戦略的な人材育成プログラムだといえよう。

私はすべての日本人が英語をできるようにならなければならないとは思わないが、少なくとも幼稚園から大学まで公立で教育を受けても、第一外国語である英語がある程度使いこなせるような教育制度であるべきだと思う。そして、国家公務員や海外市場をターゲットにした企業の社員は、ある程度のレベルの語学力は必須だといえよう。国家の競争力を考えれば、日本の教育システムがそういった人材を輩出できていないのであれば、教育投資として失敗だ。日本の英語教育を抜本的に変える具体的な方法についての私見は、以前ブログで書いた通りである。(決して韓国の全てを真似すべきとは書いていないので、詳しくはリンク記事を読んでいただきたい。)韓国の場合、競争社会がもたらす弊害の部分があることも否めないが、そういった競争に勝ち抜いてきた人材と競い合っていかなければならないことは避けられない現実である。直視せよとはそういうことだ。

ちなみに、私の勤め先の日本財団でも現在、「日本財団国際フェローシップ」を募集中だ。25~40歳の、1)研究者(人文・社会科学および情報学、環境学などの学際研究分野。自然科学分野でも政策研究、途上国援助などの実践的な研究は対象とする。)、2)政治・経済・法律・情報・環境・市民活動などの分野において公益性の高い活動をする実務家、3)行政官等を対象に、研究・留学費用や生活費等が支給される。意欲ある方はぜひご応募を。
http://www.nippon-foundation.or.jp/what/projects/fellowship/

学びのエバンジェリスト
本山勝寛
http://d.hatena.ne.jp/theternal/
「学びの革命」をテーマに著作多数。国内外で社会変革を手掛けるアジア最大級のNGO日本財団で国際協力に従事、世界中を駆け回っている。ハーバード大学院国際教育政策専攻修士過程修了、東京大学工学部システム創成学科卒。1男2女のイクメン父として、独自の子育て論も展開。アゴラ/BLOGOSブロガー(月間20万PV)。著書『16倍速勉強法』『16倍速仕事術』(光文社)、『マンガ勉強法』(ソフトバンク)、『YouTube英語勉強法』(サンマーク出版)、『お金がなくても東大合格、英語がダメでもハーバード留学、僕の独学戦記』(ダイヤモンド社)など。

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