争点なき参議院選挙の争点

2013年07月05日 08:30

きのうは参議院選挙の公示で、各党の党首討論があったようだが、ほとんど見る気がしなかった。総選挙の勢いがあれば、維新の会が自民と合流して憲法改正の大論争が起こるはずだったが、維新がこけたために参議院で改憲勢力が2/3を取ることは不可能になり、すっかり争点のぼけた選挙になってしまった。


安倍首相も憲法にはほとんど言及しなくなり、アベノミクスの評価が唯一の争点になりそうだが、野党の攻め方が物足りない。民主党の海江田氏は、もとリフレ派だったから「インフレで庶民が困る」みたいな話しかしないし、維新の橋下氏は「既得権の打破」という抽象論。アベノミクスが本当に機能しているのか、そのリスクはないのか、という点をちゃんと論じてほしい。

まず一般国民にもわかりやすいのは、JBpressにも書いたように、消費税が2015年に5%ポイント上がるのだから、それと同じ時にさらに上乗せして2%のインフレ目標を設定するのは、どう考えてもおかしいという問題だ(黒田総裁は消費増税とは別だと国会答弁している)。

これは日銀の内部でも問題になっており、早川元理事もいうように、「再来年の春までに2%インフレが実現されれば、2015年1~3月の消費者物価上昇率は、消費税の影響も含めると4%以上となる。国民の多くは、こうした高いインフレ率が直ちに実現することを望んではいまい」。

そもそもインフレ目標は金融緩和の目安であり、「何月何日に実現する」というものではない。ウッドフォードも指摘しているように、「私なら、そういう言い方[2年で2%]はしなかった。助言するとすれば、何を目指しているかを示したとしても、特定の期日は口にしないことだ。期日を限れば簡単に約束をやぶることになり、自分の責任ではない問題で批判されることになるからだ」。

さすがに黒田総裁もそれに気づいたようで、きのう出た見解では、4月にあった「2年程度の期間を念頭に」という期日が落ちている(久保田博幸氏の指摘による)。これで岩田副総裁の辞任が確実になった(彼が約束を守るなら)のはめでたいが、期日を限定しないと、かえって半永久的に国債購入を続けるはめになる。

野党が攻めるべきなのは、この出口戦略の欠如だ。もしアメリカのように長期金利が2.5%を超える状況になると、いま日銀の保有している国債は1割近く値下がりするだろう。そのとき国債を200兆円保有していると、評価損は10兆円を超え、日銀(自己資本5.7兆円)は債務超過になる。

この場合も政府が一般会計から資本注入できるが、これは納税者の負担である。それより中央銀行が債務超過になるという事件が、円の信認を失わせて通貨のコントロールがきかなくなるおそれが強い。そういう出口戦略をまったく考えないまま、1ヶ月に14兆円というハイペースでマネタリーベースを増やすのは異常である。これは長期金利の高騰を抑えるためと思われるが、コントロールがきかなくなったらどうするのか。

――こういう話はテレビ向けではないと思うが、黒田総裁が財政破綻やハイパーインフレのリスクを増大させていることについて、せめて海江田氏は専門家らしく数字をあげて安倍首相を問い詰めてはどうだろうか。

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池田 信夫
アゴラ研究所所長 青山学院大学非常勤講師 学術博士(慶應義塾大学)

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