太陽光発電による脱原発の可能性を考える --- うさみ のりや

アゴラ

さて参院選も終わったということで、少し骨太な話題について定期的に考えていくことにしました。

何がいいかと思ったけれどやっぱりホットトピックでもあり、お金になりそうな話題でもある、「再生可能エネルギーによる脱原発の可能性について」考えていこうと思います。そういうことで、今回取り上げるのは再生可能エネルギーといえば筆頭に上がる太陽光発電の可能性についてです。もう少し正確に言うと、「原発一基分のエネルギーを代替するにはどのくらいの太陽光発電パネルが必要なのか」ということについて考えていきたいと思います。


原発一基が1日あたり発電する電力量(kwh)について

ということでまずは原発一基が一日どれくらい発電するかということについて。原発は太陽光エネルギーと違って自然環境に発電量が左右されることがないので計算は簡単です。

【条件】

○原発1基あたりの発電量:110万kw
→今話題の柏崎刈羽原発の1~4号機を参考にしました。(http://www.pref.niigata.lg.jp/genshiryoku/kk-plant.html)

○設備稼働率    :70%
→2010年以前の実績(http://www.rist.or.jp/atomica/data/pict/02/02050204/01.gif)を参考にしました。

【計算】

電力量=発電量×24時間×設備稼働率=110万kw×24h×0.7=1848万kwh

【総評】

ということで原発1基が一日当たり発電する電力量は1848万kwhとさせていただきます。ちなみに柏崎刈羽原発の面積は420万平方メートルとのことでここに7基の原発がありますので、単純に7で割ると一台当たりの面積が60万平方キロメートル*なので、1平方メートルで一時間あたり約1.3kwhの電力量を生み出している計算になります。

  *本当は6,7号機の出力が135.6万kwと高いので単純に7で割るのは問題あるのですがここは簡便化のため目をつぶってくださいませ)

原発一基を太陽光発電パネルで代替するにはどれくらいの面積が必要か

さて続いて1848万kwhを太陽光発電で一日で生み出すにはどの程度の敷地が必要か計算したいと思います。

【前提知識】

太陽光パネルの性能は、1㎡あたりに一時間で1kwhのエネルギーが注がれるとの前提のもとでそのうち何%をエネルギーに変換することに成功したか、という「変換効率」であらわされている。太陽光パネルは種類によって変換効率が異なるが、現状では多結晶シリコンが市場で支配的なので多結晶シリコンを前提に計算する。

【条件】

○変換効率:10%

→エネ庁の実測データ(http://www.enecho.meti.go.jp/energy/newenergy/h23houkoku.pdf)の多結晶シリコンのシステム変換効率を参考にしました(p34)。前述のとおり原発は1㎡当たり1.3kwの電力を生み出してますから、後述の設備稼働率も併せて考えるとだいたい原発の1/100程度の土地利用効率となります。

○設備稼働率:11%

→土地が広くて余っている北海道のような場所でなければメガソーラーをたくさん作るのは非現実的と考え北電の資料を参考にしました。(http://www.pref.hokkaido.lg.jp/kz/kke/HEPCO_2.pdf)なおこれに関して「太陽光パネルは広く家庭用の屋根に分散させるべきだから、その前提はおかしい」との批判があることは理解しますが、送電負担や余剰電力を揚力発電(=要は水力発電を用いた蓄電機能です)に回す手間を考えるとやはり原発代替という観点ではメガソーラーによらざるを得ないと考えて、メガソーラー案を採用いたしました。太陽光発電設備は単純に夜機能しなのと昼でも気象条件に左右されるので、設備稼働率はこの程度にしかならないのんですよね。

【計算】

原発一基当たりの一日分の電力量を代替する太陽光パネルの面積(㎡)

=1848万kwh÷(1kw×変換効率×24h)÷設備稼働率
=1848万kwh÷(0.1×24)÷0.11
=7000万㎡
=70k㎡

【コメント】

ということで原発一基分を代替するには70平方キロメートルのパネル設置面積が必要ということがわかります。よく「原発一基を太陽光発電で代替するには山手線の内側程度(65k㎡)が必要」と表現されるのですが、これが概ねあっていることを表しています。雪が降る北海道のデータを引用したため若干設備稼働率が低めに設定されていることもありますしね。ただこれはあくまでパネル面積ですので、関係施設を考えると1.5倍程度の敷地面積を必要とするので、太陽光発電設備で原発一基を代替するには概ね100平方キロメートルが必要となると考えられます。

原発を太陽光パネルで代替するにはどれくらいの面積が必要か

【前提】

現在大飯を除いて原発は止まっている状態にありますが、各電力会社とも大赤字の状態にありますのでこれは持続可能な状態ではありません。また逆にすべての原発が稼働するという前提も適切でないように思えます。そこで折衷案として「各電力会社が一か所ずつ以下の主力の原子力発電所を稼働する」という前提の下で考えると、総計で2946万kwで前述の原発にすると26.8基分の代替が必要ということになります。

北海道電力 →泊原発  →207万kw

東北電力   →女川原発 →217.4万kw

東京電力 →柏崎刈羽原発→821.2 万kw

中部電力 →浜岡原発  →361.7万kw

北陸電力 →志賀原発  →189.8万kw

大阪電力 →大飯原発  →471万kw

中国電力 →島根原発  →128万kw

四国電力 →伊方原発  →202.2万kw

九州電力 →玄海原発  →347.8万kw

すると原発一基当たり代替するのに100平方キロメートル必要ということでしたので、日本全国の原発を 太陽光発電で代替した場合、2680平方キロメートルが必要という計算になります。可住面積ベースで考えると静岡県全てを太陽光パネルで埋め尽くすイメージです。 今回はコスト的な要素をはあえて省いて面積ベースで考えてみましたが、その限りだと

「非現実的だけれど土地という観点からはできないとは言いきれない」

というのが個人的な感想です。ただコスト的な問題は全く別なので別の機会に考察を深めてみたいと思います。皆様も何かの参考にしてください。

ではでは今日のところはこんなところで。


編集部より:このブログは「うさみのりやのブログ」2013年7月24日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はうさみのりやのブログをご覧ください。