朝日記者が死んでも書きたくない甲子園の増収策

2013年08月08日 07:00

やっと沖縄から帰ってきたぜ。
さあ、東京で仕事だ、と思ったら今日から甲子園開幕。野球記者時代、プロ野球の取材の方がずっと楽しかった一方で、甲子園取材は高野連から抗議文を送られるなどロクでもない思い出が多いのだが(汗)、今年は格別。東東京から9年ぶりに母校が出場するのだ。快進撃が続けば、仕事のスケジュールを調整して3年ぶりに「聖地」へ行こうと思う。初戦突破を祈る。


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さて、その甲子園だが(※写真はwikipediaより)、この夏からチケットが値上げされる(金額はリンク先参照)。その理由はアベノミクスによる物価上昇・・・ではなく、高野連の収益悪化だそうだ。本格的な値上げは阪神・淡路大震災に見舞われた1995年以来で、高野連の経営状態も背に腹は代えられなくなりつつあるようだ。

●台所事情が苦しい高野連
先述した高野連からの抗議は、当時の特待生問題で強権的な体質がクローズアップされた組織を見直す企画記事に対してだった。抗議の引き金になった一文とは別に、記事では高野連の経営状態の検証も行った。それで、その当時(2007年度)と12年度を比べると、高野連の流動資産は約3,876万円とやや増加しているが、資産全体でみると、昨年度の正味財産は14億円。5年間で5億円を減らしている。

てなわけで、圧倒的な稼ぎ頭である事業収益(春夏の甲子園大会の売上げ等)の推移も気になるところ。07年度の夏大会といえば、決勝でストライクを取ってくれない審判のエコ贔屓に広陵のエース野村君(現広島)が泣かされた末、佐賀北・副島君の奇跡の満塁弾でとどめを刺される悲劇が目に浮かぶが、同年度の事業収入は6億9千万円。そして時は流れ、大阪桐蔭が史上7校目の春夏連覇を遂げた昨年度は6億1千万円だった。年々減少傾向にあるそうで、苦しい台所事情がうかがえる。なお昨年度の高野連の経常収益は6億6千万円。事業収入がほぼ全ての状況であり甲子園の観客動員が死活問題といっても過言ではない。警備員の人件費などもバカにならないらしく、仮に無料の外野席を数百円徴収するなどしても小手先の増収策だけでは間に合わない。

●切り札は放映権料販売だ
プロスポーツビジネスの場合、大まかな収入の柱は「チケット(入場料)」「スポンサー(広告)」「グッズ(関連商品のロイヤリティーなど)」そして「テレビ」(放映権)だ。ところが高野連はNHKなどから放映権料は取っていない。6年前に取材した当時に聞いた話では、甲子園大会は歴史が古く、放映権料という概念が発生する前からの伝統があるため、特に考えていないということだった(なお五輪で放映権ビジネスを導入したのは、1960年のローマ大会から)。また朝日放送と毎日放送から285万円の助成金を得ており(決算書より)、それで十分という考えなのだろうか。放送局側も仕入れ値ゼロで夏の放送枠を埋める国民的娯楽コンテンツが手に入るということで、ある種の暗黙の“合意”があるようにすら見える。

しかし、スポーツビジネスの関係者の間では常識だが、かつて運営が苦境に立った五輪が放映権ビジネスで蘇生した歴史がある。IOCもかつてはアマチュアリズムが過剰だった時代があるが、開催都市に巨額の負担を与えるなどの行き詰まりが生じ、84年のロス五輪から商業路線に大きく転換。この時、放映権料を巧みに釣り上げ、大会は2億㌦の黒字に。その後の五輪やサッカーW杯での巨額な放映権マーケットの形成につながった。※写真は商業五輪への転換点にもなったロス五輪~wikipediaより

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●収益は野球振興に使えばいい
「プレイボールの時間までテレビ局に決められるのではないか」
その昔、高野連の幹部の一人に放映権料を導入しない決定的な理由を尋ねると、このような懸念を示された。確かに五輪も、視聴率を求めるテレビ局の意向でショーアップが要求された。柔道着のカラー化、バレーボールのラリー・ポイント制への移行、試合時間が長い野球・ソフトボールの除外など様々な影響を与えてきたのも事実だ。

しかし、全国中継の主体であるNHKが過剰なショーアップ化を付きつける可能性は少ないと思う(たぶん…苦笑)。筆者も、公益財団法人である高野連に対し、「皆様の」公共放送から法外な金額を巻き上げろと言うつもりもない。ただ、放映権が「金のなる木」であることは自明の理なのだから、最初から放棄するのはおかしいと言いたいだけだ。仮に、民放の朝日放送が巨額の放映権料を払ったところで高野連が内部留保をため込めば、今度は公益財団法人としての見識を、監督官庁である文科省から問われてしまう。なので、指導者不足に悩む公立高校が多い中で監督コーチなどの育成基金であるとか、プロ野球チームの無い県のメインスタジアムの整備費に充てるとか、「高等学校野球の健全な発達に寄与する」(高野連定款第3条)という目的を名実ともに果たすためにお金を使う選択肢があってもいいんじゃないか。朝日の記者は絶対そんなことは書かないけどね。

というわけで夜が明けたら開会式。ちゃおー。

新田 哲史
Q branch
広報コンサルタント/コラムニスト
個人ブログ

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新田 哲史
アゴラ編集長/株式会社ソーシャルラボ代表取締役社長/NPO法人ICPF 情報通信政策フォーラム理事

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