風邪をひいたら、もっと働け

2013年09月26日 09:00

風邪はひき始めが肝心。悪くならないように休養をとって、栄養のあるものを食べたらいい。逆に、もっと働け、食事も抜きだ、というような過酷な労働環境は、あり得ない。それでは、風邪がこじれ、肺炎か何か、より深刻な病気になって命にもかかわる。


以前、地方銀行の頭取の方とお話をする機会があった。そのとき、頭取は、「融資先のお客様の中には時々熱を出す方がいらっしゃいますが、しばらくすると何事もなかったように元気になられることが多いですね」というようなことを仰った。

事業には、大波小波、変動が避けられないから、熱が出る程度の経営不振は常にある。それが、風邪になり、肺炎になり、命にかかわる状況にまで至るかどうかは、銀行にも簡単には見通せない。ただ、頭取としては、熱が出たときには、出来るだけ暖かく見守りたい、出来れば一緒になって業況の悪化を防ぎたい、というお気持ちだったと思う。

「風邪をひいたら、もっと働くのか、食事も減らすのか」、これもまた、別の地域金融の経営者のお言葉だ。風邪をひいているとき(まさに金融の支援が必要なときに)、個人としての思いとは別に、銀行経営としては、十分な支援ができない場合のあることを言っておられるのだ。

もっと働けというのは、リスクに応じた金利のことである。経営状態の悪化に応じて、与信リスクが高くなるので、金利を上げざるを得ないということだ。食事も減らすというのは、同じ理由で与信総量そのものも削減せざるを得ないということだ。このような金融対応をとられれば、業況が一段と悪化するのは間違いない。直るかも知れない風邪を、肺炎にしてしまうのである。更には、死に至らしめる。

ここに、現在の金融の深刻な矛盾が存在することはよく知られている。銀行には、厳格な資産査定、つまり融資先の信用リスクについての厳格な評価が要求されている。故に、信用リスクの悪化に応じて、金利を上げたり、融資を回収したりするのは、銀行としての当然の行動、むしろ銀行の正しいあり方として求められている行動になるのである。しかし、一方で、そのような行動は、資金を必要としている企業へ資金を回すという銀行の社会的使命に反してはいないか、という反論もあるわけだ。

極めて難しい問題である。

森本紀行
HCアセットマネジメント株式会社 代表取締役社長
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