安全審査を妨害する泉田知事が電気代を2割上げる

2013年09月13日 00:20

柏崎刈羽原発についての原子力規制委員会の安全審査を妨害して批判を浴びた泉田新潟県知事がインタビューで言い訳しているが、話が論理的に矛盾していて意味不明だ。


彼が「建屋とフィルターベントの施設を一体化させてほしい」というのは地元の陳情にすぎず、そんなものにいちいち規制委が答える義務はない。そういう問題も含めて安全性を審査するのが規制委の仕事であり、泉田氏はそれに介入する権限も専門知識もない。ちなみにフィルターベントについては、NRCは新安全基準で義務づけを見送っている。

わからないのは「津波、電源喪失はきっかけでしかない。(本質は)冷却機能の喪失だ。止める、冷やす、閉じ込める、これが本質論」と福島第一の事故の「本質」を述べておきながら、その直後に「原因が何だったか分からない。みんな悪かったねでは済まない」と述べて、原子力規制委員会の説明を求めていることだ。彼は事故の「本質」がわかっているのだから、「原因が何だったか分からない」はずがない。

これまでも泉田氏は「福島の検証が終わらないうちは、柏崎の再稼働は認めない」と主張してきたが、彼は事故の「本質」をすでに知っているのだから、もう検証の必要はない。政府・国会に加えて民間事故調まで詳細な報告書を出しているのだから、検証は十分だ。彼も自分で言っているように、津波による電源喪失が原因である。

「メルトダウンについて、誰が嘘をつけと言ったのか、東電は説明する必要がある」に至っては事実誤認だ。私が3月12日の記事で書いたように、東電の初期の報告には「燃料溶融」という言葉があり、枝野官房長官は「炉心溶融のおそれがある」と言っている。初期にmeltdownという英語を使わなかったのは、この意味が曖昧で、圧力容器や格納容器が破壊される全壊事故(breakdown)の意味に使われる場合があるためだ。福島では、最終的に炉心はすべて溶けていたが、圧力容器は破壊されていないので、狭義のメルトダウンではない。

地元の柏崎市も刈羽村も安全審査の申請に合意しているのに、県が審査を妨害する法的根拠は何もない。地元の安全協定は、避難誘導などについての紳士協定で、これも地元の市と村が同意しているのだから、県が妨害する根拠にはならない。

本来は柏崎は安全審査の第1弾になるはずだった。東電の家庭用電気料金は8.5%値上げされたが、これは柏崎が動いているという架空の前提で算出したもので、このまま再稼働できないと、さらに8.5%(合計17%)の値上げが必要になる、と東電は言っている。自由化されている大口料金は合計2割以上は上がるだろう。これで関東地方から製造業が出ていったら、二度と元には戻らない。

合計820万kWの柏崎を1年間止めておくと、東電は約1兆円のLNGや原油を余分に輸入しなければならない。これは今度、政府が支援を決めた汚染水処理費用470億円の20倍以上である。すでに東電は資金繰りに困る状況になっており、柏崎が動かないと汚染水の処理も遅れ、納税者の負担も増える。意味不明の「検証」を求めて安全審査を妨害する泉田知事は、今や日本経済の脅威である。

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池田 信夫
アゴラ研究所所長 青山学院大学非常勤講師 学術博士(慶應義塾大学)

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