映画『スティーブ・ジョブズ1995』を観る --- 城 繁幸

2013年09月16日 10:19

本作のベースとなっているのは、1995年に米国のテレビ番組向けに収録されたテープだ。だが実際にオンエアされたのはごく一部に過ぎず、残りの部分はマスターテープが紛失してしまったため長らく「幻のインタビュー」と呼ばれていたらしい。

最近になってマスターテープをダビングしたビデオテープが見つかったことから、HDマスター化して編集したものが本作だ。

BGMもなく、ほぼジョブズ一人が画面の真ん中でしゃべり続けるというおよそ映画らしくない映画ではあるが、りんご信者でもない筆者でさえあっという間に話に引き込まれてしまうほどこれがディープで面白い。


尺の3割くらいはジョン・スカリー(かつてジョブズをアップルから追放したトップ)とマイクロソフトをdisっているが、今振り返ると「なるほど」と唸らせるような未来予測もちゃんとしている。

以下、印象に残った発言をいくつかピックアップしておこう。

(記憶に頼っているので意訳)

「ビジネスでは多くの物事が“言い伝え”に縛られている。『ずっとそうだから』で済まされるんだ。だからどんどん質問して自分で考えて行動すれば、ビジネスの心得は自ずと身につく」

「大事なのは思考プロセスを知り、考える方法を知ることさ。米国人は全員プログラミングを学ぶべきだ。そうすればロースクールに行くように考え方が身につく。コンピューター科学は私にすれば一般教養さ。人生の中の1年をかけて皆が学ぶべきだと思うんだ」

(インタビュアーもかつてプログラミングを学んでいたと聞き、じゃいい経験だったろう? と聞くも「いや、別に・・・」と返されちょっとブスッとした顔をする)

「ベンチャー企業が成功するかどうかは製造部門が意思決定にどれだけ参加できるかどうか。大企業はそれが絶望的に出来ない」「組織が成長軌道にのると、内容よりプロセスを重視する傾向が出てきてしまう」「たいていの物事で、最高と平均の差は2倍程度。最も優秀なニューヨークのタクシードライバーでも、平均的ドライバーの2割程度早く目的地に着けるくらいの差しかない。現在のソフトウェア産業ではその差は50~100倍にもなる。私は幸運にもそういう世界に身を置いている」

(部下をdisりまくる理由を問われて)

「真に優秀な人というのは、自分が優秀と知っているから褒めてやる必要などない。<(中略)周囲の人間が真に優秀で頼れる人に与え得る重要な助言がある。それは彼らの出来が悪い時、それをきっちり指摘してやることだ」

(マイクロソフトについて問われて)

「彼らはまるで、未来へと突き進むフォード車みたいだ。キャデラックやBMWじゃなく、フォード」「彼らは文句なしに成功している。唯一の問題は製品にセンスがないことだ」

「マイクロソフト社の製品には魂がない。ひらめきのスピリットが感じられないのさ。しかも悲しいことに、顧客の多くも魂を持っていない。でも それじゃ人類は向上しない」

(10年後の未来について聞かれて)

「注目すべきはインターネットとウェブだね」「ウェブの登場によって、私たちの夢が実現する。コンピューターが単なる計算機から脱却し、コミュニケーションの手段となるんだ。それを可能にするのがウェブさ。しかもマイクロソフト社の所有じゃない。だから革新が期待できる」

「それに世界一小さな企業もウェブでは大企業になり得る。だから10年先の未来から今を振り返った時、ウェブの登場が歴史に刻まれていると思うよ」

最後に、自分を駆り立てる情熱とはなにか、アップルとは何かについて語る内容は、アップルファンでもなくとも思わず胸にぐぐっと来る内容だ。書いてしまうと味けないのでここでは書かない。興味のある人はぜひ映画館に足を運んで欲しい。


編集部より:この記事は城繁幸氏のブログ「Joe’s Labo」2013年9月15日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった城氏に感謝いたします。
オリジナル原稿を読みたい方はJoe’s Laboをご覧ください。

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