原子力・エネルギー問題、新聞が事実を伝える使命を放棄した--おやおやマスコミ

2013年09月18日 00:04

中村政雄 科学ジャーナリスト(読売新聞論説委員)

GEPR編集部より。このサイトでは、メディアのエネルギー・放射能報道について、これまで紹介をしてきました。今回は、エネルギーフォーラム9月号に掲載された、科学ジャーナリストの中村政雄氏のまとめと解説を紹介します。転載を許諾いただきました中村政雄様、エネルギーフォーラム様に感謝を申し上げます。


GEPR版

(以下本文)

「脱原発」を掲げた俳優、山本太郎氏が参院選東京選挙区で初当選したことが、よほど嬉しかったらしい。開票結果が出た7月22日の朝刊だけでなく夕刊でも、朝日新聞はデカデカと山本氏当選を書いた。限られた紙面でほかに書くことはないのか。脱原発新聞の面目にかけ力を入れていた。

朝日は7月26日付朝刊でも「山本太郎現象」と持ち上げた。

産経新聞7月26日付朝刊「花田紀凱の週刊誌ウォッチング」が、山本氏を次のように取り上げた。

「『原発ロ』だけで当選した山本太郎氏が中核派の応援を受けていたというのは既に知られた話だが、山本陣営の裏選対の最高責任者が市民の党の斉藤まさし(本名・酒井剛)代表だったとスッパ抜いたのは『文春』」

<市民の党といえば、よど号ハイジャック犯の息子と関係が深くその派生団体は2年前に菅直人元首相の資金管理団体から2009年までの3年間で合計6250万円の献金を受け取っていたことで国会で問題になった>

このところ朝日新聞は毎週1本の割り合いで原発を社説に取り上げている。原発に熱心なのはいいが、原発を廃止したときのリスクについては目をつぶっている。3・11以降原発が止まって日本が排出するCO2が急増、地球温暖化を加速していることにはノータッチだ。

温暖化は人類の近い将来に壊滅的危機を招きかねない大問題だが、無視するのは偏向報道もいいところだ。6月29日付社説は安倍政権の再稼働を認める原子力政策を批判して「未来にツケを回すのか」と書いた。CO2排出を増やす脱原発こそ未来に対しツケを回す。

上田俊英科学医療部長は7月9日付朝刊1面に、「原発がなくてもふつうに生活できることを知った」と書いていたが、温暖化のことは無視している。何事にもメリットとデメリットがある。多様な情報を読者に提供し判断材料にしてもらうのがメディアの仕事だ。一方的に脱原発向けの情報だけを提供し、世論を誘導するのは邪道だ。

日本原子力発電敦賀原発(福井県)の敷地内破砕帯が活断層かどうか問題になっていた。原電の依頼を受けて第三者の立場から調査していた海外の専門家などによる検討チームの最終報告がまとまり8月1日公表された。

英国やニュージーランドの地質学者ら13人による検証チームは7月29日に現地調査を行い、火山灰層の状況などから「活断層ではないことを示す明確な証拠がある」として、原電の主張を認め、活断層と認定した原子力規制委員会の見解を否定した。

これまで国際的な活動をしてきた定評ある中立的検証チームの判定である。当然、各紙は報道すると思ったが、拙宅に配達された朝日にはなかった。朝日は規制委の側に立ち、7月26日付社説で原電の独自調査を批判した。自社の主張に反する事実に目をつぶる、報道しないというのは「事実を読者に伝える」という新聞の使命の放棄ではないか。

日本経済新聞7月26日付朝刊に規制委の島崎邦彦委員長代理のインタビューが載った。原電敦賀2号機直下の断層をめぐり、事業者や一部の専門家が「耐震強化などの工学的な手法で安全は保てる」と訴えていることに、島崎氏は「地震の時に大丈夫だったかという実証的な結果はほとんどない」と答えている。本当か。柏崎刈羽、女川、福島第二の各原発は地震に耐えたのではないか。調べなかったのか、聞くべきだ。

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