大阪市「公募校長」は橋下市長の尖兵である

アゴラ編集部

惨敗した堺市長選に限らず、ここんところ、やることなすことうまくいっていないのが橋下徹大阪市長です。その一つが、橋下市長の肝いりで始まった大阪市の教育委員会による「公募校長」制度。約一年前、2012年の8月13日から9月10日まで「市内の公立小中学校の校長50人」を公募しました。大阪府では、これに先駆けて府立学校の校長を20人公募で採用しています。市の制度はこれを拡大したものです。


米国の小中学校なんかでは、元消防署の署長が校長になったり、銀行員が公募に応じて教員に採用されたり、教育界以外の民間から人材を求めることがよく行われています。これは、大学の教育学部や教職課程を出て自治体の教員試験を受け、そのまま学校という「隔離」された世界しか見てこなかった先生より、一般社会を経験してきた先生や校長が基礎教育の現場で子どもたちと接するほうがよりいいのではないか、という発想。さらに硬直化した学校行政を民間からの人材登用で風通しを良くし、それにより組織が活性化する、といった効果もありそうです。大阪府や大阪市の施策の目的も基本はこのへんにあるのでしょうが、既得権を握って離さない「役人大嫌い」な橋下市長が、公立小中学校の教員という役人の世界にメスを入れようとした、とも考えられます。

しかし、一年たたないうちにこうして採用された「公募校長」が、様々な不祥事を起こしていたことがわかりました。試しにちょっとググってみても「大阪市、公募校長」と検索すると「不祥事」とすぐに出てきます。この9月に大阪市議会での質疑から、公募で採用された民間校長3人にパワハラやセクハラめいた疑惑があることが判明。たとえば、教頭を土下座させたり、手続き不備で学校を中抜けしていたり、さらには女性教職員にパワハラ発言や保護者へのセクハラ行為などがあった、ということを市教育委員会が認めました。

表題ブログでは、どうしてこんなことが起きてしまったのか、その原因を探っています。日本の公立小中学校というのは、校長と教頭がトップにいます。勤務評定反対闘争などでは日本教職員組合(日教組)が激しく行政と対立し、校長や教頭に反発していた時代もあったんだが、文科省の締め付けが厳しくなり、校長という出世をエサにした労務管理もうまくいき、加入率が漸減して日教組の力が落ちた今では、校長や教頭は教職員と「同じ床で同じ夢を見る」役人化している。公立小中学校というのは、大阪府や市に限らず閉ざされた空間であり、校長を頂点にしたヒエラルキーと独特の因習が支配する世界、というわけです。

そんな「魔界」に外部から「絶対君主」である校長が落下傘のように降りて来たら、それまでの予定調和的な空気に乱れが生じ、組織のまとまりがなくなるのは当然でしょう。今回の大阪市の「公募校長不祥事」は、採用時点で人物を見抜けなかった、という理由も当然あるんだろうが、最後に残った「役人の砦」である公立小中学校からの激しい拒絶反応が起きた、という側面があります。パワハラ校長セクハラ校長の責任はもちろんとしても、表題ブログに書いているように、繊細な集団に乱暴に手を突っ込むような拙速は禁物だった、というわけです。

しかし、これで橋下市長のもくろみが頓挫したわけではありません。既得権を握る役人の頑強な砦、公立小中学校に新たな攻勢をかけるはずです。「公募校長」は橋下市長のいわば「尖兵」であり「ベクター」。実際、「もうワンチャンスを与える」などと、問題を起こした「公募校長」らをかばうような発言をしています。一方、橋下市長と距離を置き始めたマスメディアからは、その姿勢に対して批判的な報道が出てくるでしょう。今後この攻防戦、どうなるか要注目です。

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アゴラ編集部:石田 雅彦