汚染水処理には東電の法的整理が不可欠

2013年10月25日 09:16

今夜放送の朝まで生テレビは、また原子力。話題もメンツも固定してきたが、事故処理はいっこうに進まない。この最大の原因は、東電にもう金がないからだ。懸案だった今月末の770億円の借り換えは何とかクリアできるようだが、年末には3000億円の新規融資がある。


東電の純資産は8300億円。その会社が賠償だけで5兆円以上、除染や廃炉などを含めると10兆円を超える債務を抱えているのだから、普通の会社なら会社更生法で整理しないと、業務は進められない。それなのに巨額の追加融資が行なわれるのは、「最後は税金で面倒を見る」と国が約束しているからだろう。

汚染水の処理費用470億円は、オリンピック対策の「予備費」として突然わいてきた。これは国会でもまったく審議されていない裏金だ。政府の説明では「東電の事故処理に税金を投入するのは違法だが、これは研究開発の支援だ」というが、総延長1.4kmの「凍土壁」を建設するのは研究でも開発でもない。しかも技術を唯一もっている鹿島との随意契約だ。

この「巨大な冷凍庫」は、本当に必要なのだろうか。汚染水のセシウム濃度は、図のように原発の取水口ですら最大100Bq/L、30km沖合では0.1Bq/Lという微量なもので、飲料水の環境基準(10Bq/kg)さえ下回っている。きちんと水処理して薄めて流せば、人体に影響が出ることは考えられない。

キャプチャ

唯一の問題はトリチウム(三重水素)の濃度が最大15万Bq/Lと、日本の環境基準の6万Bq/Lを超えていることだが、これは自然界にも大量に存在する水素の放射性同位体で、魚の体内に蓄積することはないので、人体に影響はない。フランスでは規制していないので、むしろ環境基準(告示)を見直し、国が責任をもって事故処理にあたるべきだ。

しかし事故の「主犯」である東電の株主を保護したまま、「被害者」である納税者が何兆円も負担するのは資本主義のルールに反する。日本航空でさえ、国費投入の前提は法的整理だった。東電を「分社化」するという自民党案には、肝心のこの点が抜けている。安倍首相も曖昧な答弁をしているが、このボトルネックをクリアしない限り、「国が責任をもつ」ことはできない。

ここで470億円を認めると、関東軍が既成事実をつくって政府がそれを追認した満州事変のような「蟻の一穴」になる。今のあやふやな体制で事故処理を進めると、自治体が立て替えている1mSvまでの除染などの法的根拠のない費用もすべて東電=支援機構に請求され、なし崩しに10兆円以上の税金が浪費されるだろう。

民主党政権がドタバタでつくった支援機構は暫定的な体制で、「1年後に見直す」となっていたのだから、政府は支援機構を廃止して東電を法的整理し、BAD東電を国有化すべきだ。株主は100%減資だが、銀行の緊急融資には国家賠償が必要だろう。安倍政権は無意味なリフレとバラマキ公共事業以外はすべて先送りする方針のようだが、今の無責任体制を放置すると、消費税の引き上げ分ぐらいは吹っ飛んでしまう。

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池田 信夫
アゴラ研究所所長 青山学院大学非常勤講師 学術博士(慶應義塾大学)

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