義務教育は5歳から

池田 信夫

_SS500_教育は、日本経済にとってデフレや「成長戦略」より重要な問題である。「ものづくり」で生きていけなくなった今は、人に投資するしかないが、日本の教育はきわめて非効率だ。特に大学は劣悪だが、意外に知られていないのは幼児教育の重要性である。

政府の教育再生実行会議は、就学年齢を5歳に引き下げることを含めて、義務教育を見直す方針だという。以前の記事でも書いたように、OECDも5歳入学を推奨しており、日本政府にも勧告している。


脳科学で指摘されているように、赤ちゃんの脳の処理能力は大人より高い。神経細胞も大人より多く、成長するにつれて刈り込まれていくのだ。幼児期に形成された脳の回路(ハードウェア)は一生変わらないので、学校で教わる知識(ソフトウェア)の処理能力に決定的な影響を及ぼす。

私の経験でも、幼児教育で義務教育の効率は大きく変わると思う。私の父は地方公務員で暇だったので、毎日5時に帰ってきて子供の私に漢字を教えた。漢字は画像処理なので、幼児のほうが覚える能力が高いのだ。おかげで小学校に入ったころには新聞が読めるようになったので、私は子供向けの絵本のようなものはほとんど読んだ記憶がない。

だから延々ともめ続けている保育所・幼稚園問題は、単なる社会保障や女性参加の問題ではなく、幼児教育という観点から考えると、日本の未来を左右する大きな問題である。保育所のように子供を「預かる」という考え方は前代の遺物で、効率的に教育するという点では「遊ばせている」だけの幼稚園ももったいない。もちろん幼児に詰め込み教育をしろというのではないが、どちらも早期教育の一環として学校に組み込んだほうがいい。