オバマ氏はやはりポピュリストだ --- 長谷川 良

2013年11月01日 09:50

欧州の地から海を越えて米国の政治を見ていると、分からないことが多いが、見えてくるものもある。米国最初の黒人大統領、オバマ氏の性格、気質が何となく分かるのだ。音楽の都ウィーンはフロイトの精神分析学発祥の地だ。そこで当方はオバマ氏の精神分析の診断を試みた。
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▲旧ソ連最初の原爆RDS-1、1949年8月29日、現カザフスタンのセミパラチンスク核実験場で核実験が行われた(2013年10月、ウィーン国連の展示会で)


「オバマ氏はブッシュ前大統領のようにカウボーイ・タイプではない。自身の権力を行使することでは躊躇しない一方、世論の評価を気にする。功績のない段階でノーベル平和賞を受賞したこともあって、“平和を愛する”大統領の役割に拘る。少々臆病でしかも狡猾な面がある」

上記の診断を下した理由として以下3点を挙げる。

①オバマ政権が誕生して以来、無人戦闘機の保有機数と出動回数が増加している。イラク戦争以後、米軍の主要な戦闘はパイロットが操縦する戦闘機による攻撃ではなく、無人戦闘機が戦闘に駆り出されるケースが増えてきた。1990年代の対旧ユーゴスラビア戦争(バルカン戦争)では米軍の無人機が参戦するケースは少なかったが、ここにきてその数は急増し、無人機が戦闘で主要な役割を果たす傾向が強まってきた。米軍が現在保有する無人戦闘機の数は約8000機だ。特に、オバマ大統領の最初の4年間の任期期間、無人機の戦闘参戦回数が急増した。アフガニスタンの戦闘では地上軍の支援に関与しているだけといわれてきたが、実際は、MQ-1プレデターなど無人機は戦闘に加わっている。

無人機の利点は通常の戦闘機より安価なことだ。その上、パイロットは数千キロ離れた米軍基地から操縦できるから、パイロットの安全は確保できる。戦闘に関して国民やメディアから政治家への批判も少なくなる。米空軍では既に無人機を遠距離操縦するパイロット数は通常の戦闘機パイロットより多くなってきた。無人機を導入している国は87か国にも及ぶ、そのうち26カ国は戦闘用の無人機を保有している。最大の無人機保有国はもちろん米国だ(「無制限な『無人機』導入は危険」2013年8月6日参考)。

②米国家安全保障局(NSA)が世界35カ国の指導者を盗聴していたことが判明した(英紙ガーディアン電子版)。すなわち、スパイ活動が考えられない規模で政治の舞台裏で進行していたことが明らかになった。独メルケル首相の携帯電話盗聴はその氷山の一角に過ぎない。オバマ大統領はメルケル首相の盗聴については今夏初めて知ったと弁明しているが、この説明は大統領に批判の矛先がこないようにするためにホワイト・ハウスが考えた弁明に過ぎなく、実際はオバマ大統領は積極的にスパイ工作を支援していたとみていいだろう(「米国は盗聴工作を止めない」2013年10月26日参考)。

③オバマ米政権は昨年12月、ネバダ州の核実験場で、臨界前核実験を実施した。オバマ政権下では4回目、通算27回だ。米国は臨界前核実験の度に「放射性物質が放出される核爆発は伴わない、保有核兵器の安全確保が狙い」と説明してきた。朝日新聞電子版によると、米エネルギー省は今年7月から9月の間にかけ、火薬を使用しないで核兵器の性能を調べる新しいタイプの実験を実施したという。この種の実験は今回で10回目という(「核戦略の近代化とNPT体制」2013年5月8日)。

オバマ米大統領は大統領就任直後、ノーベル平和賞を受賞するという歴代米大統領が享受したことのない栄光を受けた。そのためか、大統領は平和賞受賞者に相応しい発言と実績を積み重ねなければならない、といった強迫概念に囚われている。オバマ氏は、「プラハ演説」(09年4月、核兵器なき世界の実現)、「カイロ演説」(同年6月、イスラムとの和解)、そしてドイツの「べルリン演説」(13年6月、核軍縮案提示)で格調あるメッセージを世界に向かって発信した。その一方、大統領選の公約でもあるイラク戦争の終結とアフガニスタンの米駐留軍の撤退を急いだ(「『平和を愛する』米大統領の軍事介入」2013年9月3日参考)。

以上の3点の共通点は何か。ヒントは、「無人機の積極的な導入」、「舞台裏での盗聴工作」、そして「『臨界前核実験』の履行」だ。ダーティな問題は世間の目が届かない処でしか履行しない。換言すれば、オバマ大統領はやはりポピュリストだ。「平和を愛する」オバマ大統領は、その仮面の裏では冷血な政治家の側面を有する。その相反する気質は外交政策の一貫性を崩す危険性がある。実際、対シリア政策ではロシアの元KGB出身のプーチン大統領に外交主導権を奪われてしまう失点を犯したばかりだ。


編集部より:このブログは「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2013年11月1日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。


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