消費者保護は「消費者庁」の解体から!

2013年12月13日 12:26

先の拙稿「食材偽装は『おばかな客』と『嘘つき商人』のあわせ技」でも書いたように、食品偽装問題の大きな原因は「儲け主義」と「ブランドに弱いおつむの足りないお馬鹿さん」にあるが、本稿では消費者庁の解体がこの種事件の再発防止に効果的である事を主張してみたい。


食品偽装問題が発覚して以来2ヶ月も経て、消費者庁が発表した予防対策とは「不当表示をした業者に対し、課徴金を科す制度の在り方を内閣府の消費者委員会に諮問する」と言う具体性の無い物であったが、同時に消費者担当相が付け加えた「早急な法改正を目指したいが、重大な改正なので委員会で検討してもらう」と言う発言は「具体策は何も出来ていない」と告白したに等しい。

我が国には食の安全に関する法律に「不正競争禁止法」「農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律(JAS法)」「景品表示法」など多すぎる程あり、「不正競争禁止法」では、「商品の原産地や原材料の虚偽表示を行った者は、5年以下の懲役および罰金に処する」と定められ、「JAS法」には違反者には2年以下の懲役および罰金が科せられると言う規定がある。

更に「景品表記法」には、商品の不当表示に関する規定が盛り込まれており、違反者には懲戒・罰金処分が科せられる。それ以外にも、刑法には「詐欺罪」もあり、消費者庁の出る幕はない。

消費者庁の手による事件処理が無理なら、事件の再発防止の役割があった筈だが、今回の事件も、噂→内部告発→ホテル内部調査→阪急阪神ホテルズ告白→マスコミ報道と言う経過を辿っており、消費者庁は社会問題化してから乗り出したのが実態で、全く役に立っていない。

これでは、消費者庁のHPが掲げる「食品表示制度が消費者の食卓を守ります」と言う言葉が単なるお題目である事は明白だ。

日本統治の「三種の神器」が「後手、後手」「想定外」「検討中」だとは解っているが、これが2009年に発足以来、超一等地の山王パークタワーに拠点を構え、約300人の陣容と年間100億の税金を使う消費者庁の実態なら、無用の長物であるとしか言い様がない。

産経新聞はかつて「わが国では100個の事態に100本の法で対処する。これでは101個目の事態が起これば、101本目の法律が必要となり、斯(か)くして法律は増殖し続け、既存法との整合性を図ることもあり肥大・複雑化する一途」だと指摘した事があるが、消費者問題でもその通りである。

消費者庁発足にあたり、新組織が満たすべき原則として:

1.消費者にとって便利で分かりやすい
2.消費者がメリットを十分実感できる
3.迅速な対応
4.専門性の確保
5.透明性の確保
6.効率性の確保

と言う6原則を掲げたが、どれ一つとして実現して居らず、これこそ「偽装原則」として非難されるべきで、消費者庁に業務停止命令を出したいくらいだ。

欧米に於ける消費者保護は、消費者に判り易い「普遍的」な需要と供給の流れに沿った規制で、日本の様に対象となる取引や商品を役所の縄張り毎に分けて規制する複雑さは無く、然も問題毎に関係法規や担当部署が誰にでも分かるメトリックス式検索表が付けられた合理的な体系になっている。

「メニュー規制」と言う世界で類例の無い規制がどの様な形になるか知らないが、規制によっては顧客と料理人の信頼で成り立つ「お任せ料理」は違法となり、日替わりメニューのコストが上がる事は必定である。
食材のメニューへの記述は、顧客から見れば普通名詞か物質名詞で充分だと思うが、外食店側が食材の固有名詞や原産地を書き込んでまで食材の特徴を売り込むのなら、虚偽記載は詐欺罪か、「不正競争禁止法」「農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律(JAS法)」「景品表示法」違反で処罰される事を覚悟すべきである。

もちろん、顧客に質問されたら正直に答える事は当然である。

過度の規制が無駄とコストの上昇につながる事は間違いないが、今回の事件とは直接関係はないものの、典型的な悪法は賞味期限の表示である。この法律による食品ロスは軽減税率による税収減以上のコストがかかっているに違いない。

表示コストも馬鹿にならない。

無駄な表示の悪例の典型にフランス系国民のヒステリアで1974年にカナダのケベック州で実施されたフランス語の表示を義務付けた「The Official Language Act of 1974」がある。

この表示法の被害は日本にも及び、薄利で苦しんでいた新潟県の燕市のスプーン、フォーク、ナイフ製造を業とした金属加工業者の多くが倒産した事もある。

今回の問題についてウォール・ストリート・ジャーナル紙は、消費者の健康に影響する深刻な事態は生じておらず、そもそも「味の違いに気づいた人さえもほとんどいない」と報じ、日本の馬鹿騒ぎに驚いている。

以前も問題になったが、”フレッシュ”オレンジジュース、”焼きたて”パンの表示の定義は出来ているのであろうか?そして各食品の原産地を証明する事はできるのだろうか?

私はそもそも「関サバ」に知財権を認めた事が間違いだと思うが、同じ「豊予海峡」を泳ぎ回る鯖を佐賀関で水揚げされたサバと他の漁港で水揚げされたサバの違いを区別できる人がいるのだろうか?

メニュー表示の規制は、考えれば考える程馬鹿らしくなる。

菅官房長官は「政府が一丸となって取り組む姿勢を示すことで、各社の自主的な取り組みを一層促進することを狙っている」と述べたが、この問題は政府が一丸となって取り組む種類の問題ではない。

政府が取り組むなら統治機構の改革だが、それが無理なら消費者庁を解体し、消費者庁が設立された時に移管された権限を元の官庁に戻す事から始めるべきだろう。

さらに、政府が迅速で的確な消費者保護政策を本気で実行したいなら、消費者保護行政は欧米の様に証券取引委員会や公正取引委員会の様に横断的組織に強制捜査権や逮捕権を与えて任せると共に、縦型組織の既存の官庁に頼らない事が最も手軽で効果的な行政である。

2013年12月13日
北村隆司

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