行方不明者に対する解雇手続等について --- 尾畑 亜紀子

2014年01月13日 06:00

1.問題の所在

連絡なく従業員が出社しないことが時折発生するが、そのような従業員に対する処遇をどのように対応されているだろうか。

通常就業規則には、無断欠勤が連続した場合には、解雇事由になるとの規定がある。そこで、人事担当者としては、解雇処分とすることを考えるものと思われる。

しかしながら、法的には、解雇通知が本人に到達しなければ解雇の効果が発生しない。

そこで、どのように対応するかが問題になる。


2.対応方法

まず、連絡が取れないといっても行方不明というわけではなく、単なる出社拒否という場合もあり、その場合は他の社員や親族に連絡をとってもらうなどして、本人と直接連絡が取れるよう試みるべきである。

そのような手段で本人と連絡が取れた場合には、いきなり解雇処分にすることはせず、よくよく無断欠勤が重大な非違行為であることを理解してもらい、自主退職を促すのがその後の労働紛争を回避する最善の手段であろうと思われる。

次に、連絡を試みても居留守は使われているものの、本人の所在がわかっているケースもある。

その場合は、解雇通知を到達が証明できるような方法で郵送する。もちろん本人が受け取りを拒絶する場合もありうるが、同居人がいる場合は同居人が受領すれば解雇の意思表示は本人に到達したことになるので、解雇通知の郵送を試みてみてもよいと思われる。

そして、他の社員や親族を通じても本人と連絡が取れないし、郵便を送付しても到達しない状況であれば、連絡を取る手段がないことになる。

その場合は、手続き上、意思表示の公示送達という手段がある。これは、意思表示の相手方の所在が不明である旨の資料を提出して、簡易裁判所に申立を行うもので、意思表示の送達を制度的に擬制するものである。

簡易裁判所の運用では、申立から数日して裁判所の掲示場に意思表示を掲示し、2週間経過すると、意思表示が相手方に到達したことになる。

3.関連する問題

社員が行方不明になると、解雇の意思表示の到達の問題のほかに、使用者と労働者間の債権債務関係の帰趨についても問題になる。

例えば当該社員が社宅に居住していた場合、賃借人の名義が会社であるから、会社は当然契約を解除するのだが、原状回復にかかる費用は本人に請求もできず、会社負担となる結末となることが多い。

また、社宅とはいえ賃料の相当額を社員が負担しているケースも多く、通常賃金から相殺することについて予め同意が得られていることもあるので、未払い賃金があれば相殺をすることになるが、未払い賃金がなければ契約解除までの本人負担の賃料を会社が負担することにならざるをえない。

さらに、社会保険料についても賃金から控除されるのが通常であるが、公示送達で解雇の意思表示を行っても、到達まで時間がかかるので、ノーワークノーペイにより欠勤期間中の賃金は発生しないものの、社会保険料はかかるため、賃金から本人負担分も控除できないという状況も現出する。

4 おわりに

突然社員が失踪してしまうことについては予見することが困難であるが、実際にそのような状況が発生すると法的な処理が煩雑であるし、使用者側は余計な経済的負担を負わざるを得ないことにもなりかねない。

予防が難しいものではあるが、上司と部下の間の日常のコミュニケーションを十分とることによってある程度の予防が可能な場合もあると思われ、注意を喚起していただくためにこのような問題が実際に発生していることを報告させていただいた。

尾畑 亜紀子
弁護士


編集部より:この記事は「先見創意の会」2013年12月17日のブログより転載させていただきました。快く転載を許可してくださった先見創意の会様に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方は先見創意の会コラムをご覧ください。

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