中小企業が注目すべきオレ流マネジメント --- 山元 浩二

2014年01月19日 11:38

最近、中小企業向けのリーダー育成をテーマにした本を出した関係で書店にご挨拶回りをしています。ビジネス書のいくつかあるカテゴリーのなかでも「リーダーシップ」は近年、特に市場が大きくなってきました。中日ドラゴンズ・落合博満GMの『采配』は40万部を超え、スターバックスコーヒージャパンの元CEO岩田松雄さんの『「ついていきたいと思われるリーダーになる51の考え方』は30万部超など、おなじみのベストセラーも積まれています。


それだけ読者のニーズが強いわけですが、裏を返せば日本の企業社会がリーダーシップを養う仕組みが十分でないことの表れかもしれません。一朝一夕に身に着くものでもないし、かといってどうすればいいかも分からない。日本企業の99%を占める中小企業、特に私のクライアントの何社かのように、従業員数が十数人と言った小さな会社では、研修体制も覚束ないところが普通です。著名な監督や経営者から少しでも学び取れることはないのか、ベストセラーがある種の「駆け込み寺」になっています。

そんな中、落合さんの手腕がまた脚光を浴びています。このシーズンオフから、GM職として現場に復帰し、最初の大仕事となる契約更改交渉で、総額8億円を削減。早くも「オレ流」マネジメントの凄みを見せました。選手会の調査では、中日の日本人選手の年俸総額は12球団で2番目に多い31億円(首位は巨人で38億円)。4分の1のコストカットになります。

長年の功労者で、大幅減俸を内示されていた井端選手が、巨人に流出したものの、これだけの削減で、契約を公開した選手たちで保留者がゼロ。しかも減額になった選手の大半は、野球協約で定める減額制限(1億円超は40%超、1億円以下は25%)を超える提示額だったわけですから驚きです。落合さんの圧倒的な存在感が、若い選手にハンコを押させる無言の圧力になってしまったこともあるのでしょうが、海千山千のベテラン選手も含めての一発更改ですから、中小企業の人事評価制度構築・運用のお手伝いをしている身としては、どういうアプローチをしていたのか、とても興味を引かれます。

信賞必罰という言葉は聞こえがいいですが、「言うは易く、行うは難し」。野球選手ならずとも、一般の企業社会で年俸ダウンは、対象社員のモチベーションを低下させる危険が付きまといます。ここで大事なのは、まず社員本人に低評価の理由を納得してもらうこと。そして、与えられた役回りの中で、会社の成長へとつながる貢献を果たせば、もう一度、応分の評価が与えられるのだということをしっかり理解してもらうことです。

そのことをしっかり伝えるためにはマネジメント側と社員の根底に信頼感が醸成されていなければなりません。その時、マネジメント側はどのような姿勢でいるべきなのか。監督時代の落合さんは、こんな考えだったようです。

8年間、監督を務めてきて強く感じているのは、選手の動きを常に観察し、彼らがどんな思いを抱いてプレーしているのか、自分をどう成長させたいのかを感じ取ってやることの大切さだ

『采配』(第3章、141ページ)

これは全く一般の企業社会でも同じことです。評価の高い低いに関わらず、社員に対し、「あなたの成長意欲は分かっていますよ」とサインを送ってあげることで、信頼感を維持して、本人を安心させられます。ここから後は、社員の意欲を組織パフォーマンスに反映するように、意識づけたり、チームで補い合ったりできるように仕向けていく。できればそれを制度的に裏付けられると最適です。すると、一度は低評価で年収が下がった社員も、もう一度、奮起して「組織の中で」成果を出そうと、また頑張ってくれます。

オレ流マネジメントが、GMとしてどのようにチームを再建していくのか。来年のプロ野球を見る楽しみがまたひとつ増えました。

山元 浩二(やまもと こうじ)
日本人事経営研究室株式会社 代表取締役

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