成人式を迎える「Jリーグ」は次のステージへ向かえ --- 西村 健

2014年01月19日 12:17

Jリーグが設立されて20年を迎える。先日のベルギー戦の活躍が如実に表しているように、サッカーの競技レベルは大幅に上がり、競技人口も増え、老若男女がサッカーに熱狂する姿を見ると、サッカー文化が定着したことを実感する。地域社会への根付き方は開始した時から想像を超えた盛り上がりだ。チームの勝ち負けに一喜一憂する市民の姿、メディアでの反応、サポーターの熱い応援、チーム・ユニフォーム姿の少年が街中を歩く姿など地方でのサッカークラブの愛され方の深さを地方に出張に行くたびにつくづく感じる。地域のスポーツ振興を、そして、コミュニケーション空間を支えている。


こうした成功の背景には、当時のチェアマンの川淵三郎氏の掲げた「クラブ名に地域名を入れる」という原則・理念、そしてその徹底がもたらした影響はとても大きい。平成に入って、新たなコンセプトを掲げ、それを体現できた稀有な社会的存在だと思う。なかなか理念を具現化するのは複雑な現代社会で難しいものだが、時代を先行し社会にインパクトを与えた成功例だろう。自分も少しはサポーターとして一員として(ほんの少しは)参画できたという意味で本当に幸せであったし、関係者は万感の思いだろう。まさにこの日本社会を支えたといってよい。だからこそ、新しい20年を迎えるにあたって、次の、新たなコンセプトを打ち出してほしいと強く願う。それも時代を先行した新しいやり方で。

Jリーグの委託を受けて日本経済研究所が行った「Jリーグの存在が地域にもたらす効果に関する調査」では経済効果分析と定性的な分析を行っており、そこでは、チームのイメージアップ、地域の一体化への貢献、特に地域愛、スポーツ文化への貢献などが指摘され、Jリーグは「地域愛の源泉」「ソーシャルビジネス」と結論づけられている。

他方、東京への一極集中、コミュニティの崩壊、知り合い以外は「風景」という人間関係、相対的な「幸福度の低さといった日本社会の課題は相変わらずだだ。それどころか、ますます課題としての深刻度は大きくなるようにも思える。地域住民やコミュニティに愛郷心や大きな誇りを与えたJリーグ。だからこそ、経済成長ではない、新たな時代の等身大の社会モデルを提起できる可能性をそこに見出すことができる。

現在、東南アジアへの拡大戦略などの画期的な手段や戦略は実行に移されている。こうした目的達成のための手段については、今の幹部層・関係者たちの努力でうまくいくだろう。これまでの成功を鑑みれば当然のことだ。だからこそ、その努力を支える新しいコンセプト、思想を打ち出してほしいと強く思う。日本社会はどうあるべきか。その課題解決にどう貢献できるか。

社会課題の解決についていうと、各チームはすでにチームの理念を体現した社会的な活動を実践、そして地域社会での一定の役割を担っている。清水エスパルスは「カーボンオフセットクラブ化計画を掲げCO2の削減活動をしているし、各チームは地域の健康支援、公共施設の指定管理者としての施設運営、地域でのサッカー教室開催、地域型スポーツクラブの運営、もちろんスポーツ振興などの活動を進めている。セレッソ大阪のように地元スポンサー企業の出会い・紹介を手掛けているところもある。

ただし、専門家から見ると、自治体の施策や事業の協働主体としてもっと関与できるはずという思いもある。各チームやサポーター組織の組織運営能力・影響力はどのNPOよりも強力であるから、自治体の各種計画策定過程への参画、他の地域活動団体との協働にも関与できる。地域活動団体を結びつける場の提供、団体としての接点としての役割を担える。

こうした課題活動を行うためにも、20年たった今、Jリーグや各チームがそれぞれ理念を構築する必要があるだろう。理念として、たとえば、引きこもった若者や不祥事を起こした若者を更生させ社会に復帰させる、ストリートサッカーを通して垣根のない出会いによるコミュニティを再生させる、地元の誇りをもとにした幸福度向上、連帯・共同体再生、スポーツが健康に与える影響を追求する、地域自治会や社会福祉活動と連携していくなどなどの理念でもいいかもしれない。

地道な取り組みをする関係者に大変失礼だが、思うことがある。川淵三郎氏という偉大のカリスマがいた。今、カリスマがいないのなら、関係者みんなで考え、議論し、集団発想で作っていく。それこそ多くのことが専門分化された現代にふさわしいではないか。コンセプトを関係者が皆で対話して考えていってほしい、というかみなで考えていきたい。

欧米の格言にある「議論から光が見つかる」。チームという皆がプライドを感じる組織であり、サポーターという「ダイバーシティ」の持った仲間を持っているのはJリーグぐらいだろう。行政主導でも、企業主導でもないJリーグのような社会的存在が先導してもらいたいと思っている。マーケティング戦略としての「CSR」ではない、地域の実情に即した本物の理念を掲げられる貴重な存在に期待したい。偉そうなことを述べている私ももちろん1サポーターとして陰ながら協力していくつもりだ。

西村 健
日本公共利益研究所 代表

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