フィクションの中を生きる厚生労働省 --- 川嶋 英明

2014年02月08日 13:16

散々な非難にさらされた昨年4月の労働契約法の改正。

そのなかでも最も批判を浴びたのが、契約社員の契約期間が通算で5年を超えた場合で、労働者の希望があるときには、有機の契約期間を無期に変更しなければならない、といういわゆる5年ルールでした。厚労省はこれを契約社員の雇用の安定を図るために制定したのです。


法改正の前後から多くの企業がこの改正に合わせて会社の就業規則を変更するなど対応に追われました。そして、こうした動きに反発の声を上げたのが、誰あろう非正規の契約社員たちでした。

人件費の抑制や解雇リスクを避けるために契約社員を雇っているのに5年経ったら無期契約を結ばなければならないなんてとんでもない、と考えた多くの企業が取った行動が、契約社員との通算契約期間の最大を5年未満に設定したからです(他人事のように書いてますが、私もそうした動きに手を貸した1人です)。

こうして今も労働市場の混乱を生み続けている5年ルールですが、近いうちに改正される見通しがでてきました。それが以下のリンク先です。

年収1075万円以上、適用除外へ=有期雇用5年ルール―厚労省

ようするに、弁護士や公認会計士、博士号取得者のように高度な専門的知識を持つ労働者で、年収1075万円以上の者に関してはこの5年ルールの適用除外にしますよ、というのが今回の改正案です。突っ込みどころがありすぎて何から言っていいのかわかりません。

まず、高度な専門的知識を持つ労働者かどうかを別にして、年収1075万円以上ももらっている契約社員が今の日本にどれだけいるのでしょうか。プロ野球選手やサッカー選手などは年単位の契約で1千万円以上もらっている場合もありますが、彼らの結んでいるのは、通常は労働契約ではなく請負契約のためそもそもこのルールの適用外。外資系金融機関ならわかりませんが、彼らがこの法改正で対象となるかはまた別の話です。

また、例として挙げられている弁護士や公認会計士が企業と年収1075万円以上の有期契約を結ぶ、という状況も意味不明です。それだけの賃金を支払う価値が有るのならなぜ有期契約なのか。そもそも、解雇・雇い止めリスクのある労働契約など結ばず、委託・請負契約を結んだほうがいいのでは。それに、それだけの賃金を支払う価値が有るとされた弁護士や公認会計士の側からしても、それだけの能力があるなら独立開業等でもっと稼いでいけるはず。この改正で想定される弁護士や公認会計士というのは、優秀でずっと独立開業していたけれど、そろそろ大企業の安定がほしくなった中高年の先生くらいしか思い浮かびませんが、そんな人っているんですかね?

博士号取得者に関しても同様に意味不明で、いくら博士号を持っているといっても5年ルールの対象となるような非常勤講師の年収は200~300万円がせいぜいと言われていて、1000万円を超えるような大学教授はたいてい終身雇用です。

つまり、今回の案は法律は改正されるものの、その対象となるような労働者が全くと言っていいほど見当たらない、まるで妖精か妖怪を対象としているかのような法改正というわけです。国会で審議する時間ももったいない。

まあ、望みがあるとすれば、こうした小さな改正の積み重なりによって5年ルール自体が無くなる可能性があるということですが、それも一体いつの事になるやら。

川嶋英明
肩書き:社会保険労務士
Twitter:@Hideaki_KWSM

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