もう「原発こわい祭」は終わりにしよう

2014年02月10日 00:23

都知事選は予想どおり舛添氏が圧勝し、細川=小泉組は3位に終わった。宇都宮氏と合わせても舛添氏に及ばない完敗だが、2人とも「あきらめない」という。いまだに何を錯覚しているのかと思って演説の書き起こしを読んでみたら、小泉氏の演説の中になるほどと思う話があった。

私たちがなぜ立ち上がったか、原発は安全だ、原発はコストが一番安い、そうじゃなかったのが分かったからなんです。第二次世界大戦後、平和利用ということで原発が導入された。[…]ところが3年前、原子力、メルトダウン、あやうく東京との都民が何万人も避難せざる得ないとの危険を持った。そういう中で私も勉強しなおしました。原発は安全ではなかった、これからも決して事故を起こすことができないものが原発なんです。世の中に二度と事故を起こしていけないものなんてできますか?

最大の間違いは「決して事故を起こすことができない」という部分だ。もちろん事故は起こさないように努力しなければいけないが、リスクをゼロにする必要はない。それは自動車と同じだ。起こってもリスクは保険でカバーできる(現に福島第一以外は保険がかかっている)。原発事故の死者は、史上最悪のチェルノブイリでも約60人。日本の交通事故の5日分にもならない。

賠償コストは大きいが、これは放射線の安全基準が間違っているからで、正しい基準(100mSv/年)にすれば、福島第一のまわり1kmぐらいしか賠償も除染も必要なく、原賠法の1200億円以内で収まるだろう。このへんは冷静に見直す必要がある。小泉氏や細川氏の錯覚しているバックエンドのコストは、向こう数十年にわたって償却すれば1円/kWh以下だ。

それでも大型軽水炉の新設はやめたほうがいい。これは確率の計算できないテールリスクがあるからだ。もちろん計算できないというのは無限大だということではない。MaxMin原理に従えば、史上最悪のチェルノブイリの被害(60人)と他のリスクを比較すればいい。

原子力の代わりとして最有力なのは、石炭火力だ。ドイツをみればわかるように、再生可能エネルギーをいくら増やしても火力の代わりにはならない(火力は増えている)。新設コストは、原子力より石炭火力のほうが安い。石炭の埋蔵量はほぼ無尽蔵で、日本の技術は優秀でクリーンなので、地球温暖化を無視すれば、私はこれが合理的な解だと思う。

ただ向こう100年を考えると、どうだろうか。IPCCの第5次報告書によれば、2100年までの気温上昇は0.3℃~4.8℃と幅が大きいが、これもMaxMinで考えると、最悪の場合には海面が82cm上昇し、日本の砂浜はすべて水没する。これはテールリスクではないが、非常に不確実性の大きなリスクである。

要するに、われわれは不確実な未来の中で、さまざなリスクのトレードオフに直面しているのだ。そのどれかを絶対化して「ゼロリスク」にしようと思うと、飛行機ゼロや自動車ゼロにしなければならない。原発ゼロのコストは見えにくいが、少なくとも年間2兆円。日本経済に与える間接的なダメージはその何倍も大きいだろう。

要するに細川氏も小泉氏も、理屈抜きに「原発こわい」といっているだけなのだ。その気持ちはわかるが、まもなく事故から3年たつ。そろそろ「原発こわい祭」も終わりにし、頭を冷やして考えてはどうだろうか。今回の都知事選は、そのいい機会になった。都民は冷静に見ているようだ。

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池田 信夫
アゴラ研究所所長 青山学院大学非常勤講師 学術博士(慶應義塾大学)

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