「PC遠隔操作事件」の被告は「疑わしい」か

アゴラ編集部

警察による誤認逮捕が相次いだいわゆる「PC遠隔操作事件」は、ハイジャック防止法違反や威力業務妨害の罪で片山勇輔被告が逮捕、起訴されています。その初公判が2月12日に東京地裁で開かれ、同被告は容疑を完全に否認して完全無罪を主張。検察と真っ向からぶつかる構図になっています。


「疑わしきは罰せず(疑わしきは被告の利益に)」は刑事裁判における鉄則です。これは「冤罪」を防ぐ最後の防波堤になっているんだが、この「PC遠隔操作事件」で検察側が主張しているのが「状況証拠」です。ようするに、被告を追い詰めるだけの決定的な証拠がないまま、公判が始められた、というわけ。傍証だけで争えば、最終的には裁判官の心証や判断にゆだねらることになります。

同被告は、逮捕後から一貫して無罪を主張し、裁判でも容疑を否認しています。では、いったい誰が「真犯人」なのか、ということになるんだが、自分の無実を証明せよ、というのは「悪魔の証明」になってしまう。この言葉、同被告が取調中、ウイルス作成に使われたプログラミング言語を操れるかどうか、捜査員に問い詰められた際に使って有名になりました。

ところで「疑わしきは罰せず」という言葉なんだが、「罰せず」とは不可能の意味か意志がないという意味か、ちょっとあいまいです。「罰することができない」のか「罰しない」のか、ということ。ラテン語の原義では、完全に有罪と断定できない限り被告は無罪になる、ということです。つまり「状況証拠」だけで、同被告の有罪を断定できるのかどうかは裁判官の恣意にかかっています。

この「PC遠隔操作事件」の公判では、同被告は「自分も被害者」と主張しているんだが、もし彼が無罪だとすれば、5人目の誤認逮捕、ということになり、警察や検察の面目は丸つぶれになります。痴漢などの迷惑条例系では、被害者の訴えのみに耳を傾け、密室の取り調べなどが行われ、裁判官も最初から色眼鏡で被告を扱うなど、被告がいくら無実を主張しても「冤罪」が醸成されやすい、と指摘されています。今回の場合、マスメディアもネット住民も注目度が高い。裁判官もヘタな判決は出せないでしょう。

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PC遠隔操作の真犯人は?


Utmost respect: Solemn guard at the Tomb of the Unknown amid driving snow
The Washington Times
米国のバージニア州には「無名戦士の墓」とアーリントン国立墓地があります。これについてはアゴラで北村隆司氏の論考に詳しいんだが、よく誤解されるように日本の靖国神社とはまったく違う性格の施設です。ワシントンDCのポトマックリバーの対岸にある。アーリントン国立墓地は、米国陸軍最古の連隊といわれる歩兵第三連隊の儀仗兵が守っています。日本の太平洋岸も二週続けて大雪。この記事は、厳寒期でも墓地を警備する兵士たちについて書いていて、ワシントンもバレンタインデーは積雪30センチの大雪になっています。アーリントンの儀仗兵は76年の歴史があり、こうした環境変化にも対応できるように訓練されているそうです。

Researchers discover a new sensory ability in humans
io9
五感の一つに嗅覚があります。こうした外部センサーは、脳内の情動反応と密接に繋がっていると考えられている。情動反応とは、恐怖や食欲、性欲のようなプリミティブな感覚です。喜怒哀楽、というより少し低次元の生物が生きていくのに必要な反応。で、嗅覚も同じように情動反応のセンサーになっている。たとえば、北海道のエゾジカは害獣になっているんだが、ライオンなど見たことも食べられたこともない肉食獣の尿をまいておくと近づいてこないらしい。逆に、マウスの嗅覚細胞のある部分を取り去ると、天敵であるネコを怖がらないようになります。つまり、センサーによって遺伝的なプログラミングが左右される、ということ。この記事では、ヒトの嗅覚に食べ物に含まれる脂肪の量をセンシングする機能があることが新たにわかった、という研究を紹介しています。今でこそカロリー過多で脂肪分を減らそうとしている人類なんだが、ほんの百数十年くらい前まで人口のほとんどは飢餓線上をさまよっていたわけで、脂肪を摂取する量で生存確率が違ったんでしょう。しかし、この我々の嗅覚センサーをダイエットという逆の作用に利用できるかどうかは、また別の話です。

アリアン5ロケット、通信衛星2機を打ち上げ
sorae.jp
宇宙ビジネスは、衛星打ち上げ競争、というフェーズに入っています。日本のJAXAが2013年9月に打ち上げたイプシロンも競合に入っているんだが、ライバルはどこも手強い。フランスのアリアンもその一つです。この記事では、2月6日にアリアンが通信衛星を積んで打ち上げられた、と報じている。香港とイタリアの通信衛星らしい。香港のものはアフリカや中東、アジア地域へ動画を配信するそうで、これまでは中古の衛星で主に東南アジア向けのものだったのが、新品を新たな市場へ向けて打ち上げた、というわけです。衛星の開発は米国企業、ロケットはフランス、というわけで、中国製ロケット「長征」を使わないところなど、けっこう融通無碍にやっているようです。

Timbersled’s Mountain Horse kit converts motorbikes into snow machines
gizmag
普通のモトクロッサーバイクがスノーモビルになっちゃう簡易キャタピラキットを紹介している記事です。前輪をスキーにして後輪に一輪のキャタピラを付ける。ゲレンデ、という公道以外の場所を走らせるには無免許でいいと思います。バイク免許があれば、ナンバープレート付きで公道も走れるのかもしれません。ちょっとこのあたり、日本における明確な指針はなさそうです。ただし、このキット、あまり過信するのは禁物。一人で雪山に入っていくのは止めといたほうがいいでしょう。


アゴラ編集部:石田 雅彦