カジノは地方経済を救うか? --- 東猴 史紘

2014年02月15日 06:00

(1)年内にカジノ推進法案が成立か

東京オリンピックが行われる2020年に合わせてカジノを解禁しようという動きが活発化している。「カジノ解禁」を中心とした統合型リゾートの整備を政府に促す推進法案(以下、カジノ推進法案)が国会に提出された。早ければ今国会中に成立する可能性もあるという。法案提出は自民、日本維新、生活の党だが法案の取りまとめには民主党やみんなの党も参加する超党派の「国際観光産業振興議員連盟」(IR議連)も中心となっている。公明党は参加せず社民党、共産党は反対しているがそれ以外の上記の党が推進派のため法案が通るのはほぼ確実と言われている。


カジノが話題になったのは、私がちょうど大学生のときで当時の石原都知事が構想として掲げたときである。私自身もその頃、自民党国会議員事務所でインターンをしていた時期で党本部で行われていたカジノをテーマにした部会を興味本位で傍聴したこともある。また、映画館やパチンコ等を手がけているアミューズメント会社のアルバイト面接で「石原都知事がカジノ構想を掲げたが、カジノを将来導入する意欲はあるか」と質問したこともあった。そのときは担当者が「ギャンブル事業には手を出すつもりはありません」と返答してきた。よくよく考えるとパチンコもギャンブルみたいなものじゃないのかなと当時疑問に思いながら帰路についたのを覚えている。実際にはパチンコはギャンブルではなく遊戯ということだが。

さて、今回提出されたのは推進法案である。カジノ解禁を政府として具体的に議論していきましょうという法案だ。なので成立したからといってすぐにカジノが解禁されるわけではない。実際にはカジノ推進法可決→3ヶ月以内に政府内部に検討組織→1年以内にカジノ実施法案の策定→カジノ実施法成立→カジノが刑法上で禁止されている賭博行為ではなくなり解禁という流れとなる。

とはいえ、カジノには負の側面がある。ギャンブル依存症患者の増加や治安の悪化、反社会的勢力との関わりなどが懸念されている。しかし、そういった負の側面が存在するにも関わらず、カジノの誘致にあたっては東京だけでなく大阪などの大都市に加えて秋田や熱海、沖縄など地方都市も熱心である。国内外からの来訪者を増やすことができる観光の目玉、地方経済活性化に寄与するものと期待されているからである。千葉県など人口浮島も検討しているという。それほど、地方都市にとってカジノは魅力的なものだろうか。ここで考えてみたい。

(2)カジノがもたらす経済効果

カジノがもたらす経済効果はどのくらいなのだろうか。米シティグループは1兆5000億円、米投資銀行のユニオン・ゲーミングも同様に約1兆円市場規模と試算し、マカオに次いで世界2位になると予測している。また日本で行われた試算の中には最大3兆円の市場となり、波及効果も入れれば最大7兆円になるのではないかという論文「カジノ開設の経済効果(佐和良作、田口順等)-大阪商業大学論集 第5巻 第1号(通号151・152 号合併号)-」もある。以下引用する。「わが国にカジノが開設された場合、その市場規模は2兆1.517億円~3兆4.438億円になり、直接、間接の波及効果を含めれば経済波及効果は4兆7.873億円~7兆6.619億円、誘発雇用人員は49万1.863人~78万7.204人になるという計算結果であった。」

もちろん、前提条件など色々あるだろうが解禁されるだけで大きな市場が生まれることは間違いなさそうだ。実際、諸外国でもカジノ解禁後は観光収入、消費額、雇用、税収ともにアップさせているケースが多い。さすがに政府の税収の8割近くをカジノ収入で占めているマカオは特殊として、日本の近隣にあるシンガポールも解禁後は国際観光客数(解禁前の2009年は970万人→解禁後の2010年は1160万人)と国際観光収入(解禁前の2009年は128億シンガポールドル→解禁後の2010年は188億ドルシンガポールドル)がアップした。

(3)カジノの恩恵を受ける都市は

確かにシンガポールやマカオなどの例を見てるとカジノは都市の経済活性化に寄与するものであるのは疑いはない。では、カジノがそのまま地方の地域の経済を救うか?となると決してバラ色ではないと思われる。たとえば、韓国の地方都市が失敗した。具体的には韓国の江原町というところだ。ソウルから思いっきり遠い僻地に誘致してしまったがゆえに市民が期待した収益は上げることができなかったようだ。

よくよく考えると、日本でもこれは当てはまる。競輪や競馬、競艇等の既存の公営ギャンブルをみても一人勝ちなのは中央競馬であり、地方で行われているものは年々売上が下がって撤退に追い込まれた地方自治体は山ほどある。また、ギャンブルではないがパチンコ業界も地方中小ホールは淘汰され、大手に身売りか廃業しているのが現状である。また、カジノ大国であるマカオでも実際は大規模な5軒のカジノリゾートが2013年の第1四半期の総収益の51%を占めているという報道もあった。

よって実際に経済が潤うのは大規模カジノリゾートを運営できて、かつアクセス立地に優れて地元以外からも集客もできる場所に限られてくるのではないか。東京や横浜、大阪、愛知などの大都市と既に人気リゾート地である沖縄、北海道である。また政府も当面は設置地域を上記の大都市などに制限し、かつ将来的にも参入障壁を高くして供給過多にならない仕組みでスタートさせると予想されることからも、カジノ解禁が即、小さな地方の地域経済を救うといった形には必ずしもならないだろう。誘致に成功し設置できても今度はお客様獲得競争が待っているからだ。

東猴 史紘
元国会議員秘書
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