「エネルギー輸入インフレ」と岩田副総裁の運命

池田 信夫

ゆうべのJBpressの記事の補足。黒田日銀の1年で「デフレ脱却」のように見えた現象の実態は、エネルギー価格の上昇によるエネルギー輸入インフレであり、国民経済にとっては大きな損失である。この期間に「物価の番人」である日銀がインフレの旗を振ったのは、きわめて有害だった。


コアCPI(生鮮食品を除く総合)の上がった最大の原因は、2.7倍にもなった原油価格(ドル建て)と、それに連動して震災前の2.5倍になったLNG価格、そして20%以上あがったドル/円レートである。そしてLNG価格のピークに原発を止めたため、電気代が10%以上あがった。これだけでコアCPIとコアコアCPI(食料・エネルギーを除く総合)の差は説明できる。

岩田規久男副総裁は「日銀のコアCPIはガラパゴスだ。コアコアがグローバル・スタンダードだ」というのが持論だが、コアは前年比1.3%でコアコアは0.7%だ。これについて彼は、昨年3月5日の所信聴取で次のようにのべている。

○御法川委員 二%の物価安定目標という話は、きのうの黒田総裁からもいただきました。この二年間というタイムフレームについて岩田候補はどのようにお考えかということをお聞きいたします。

○岩田参考人 日本の場合、非常にデフレが長くて、デフレマインドがもう定着しておりますので、これを金融政策である程度マイルドなインフレに転換することが必要ですので、今言った中期的のうちの二年は、遅くとも二年では達成できるのではないか、またしなければいけないというふうに思っています。

○御法川委員 達成できなかった場合の責任の所在ということははっきりとさせていかなければいけないと思いますが、それは、職を賭すということですか。

○岩田参考人 やはり、最高の責任のとり方は、辞職するということだというふうに認識はしております。

岩田氏は今ごろになって「2年ぴったりで達成するとは言っていない」と言い始めたが、たしかに「ぴったり」とはいっていない。「遅くとも二年」といっているのだから、彼が就任した2013年3月20日から2年後の2015年3月20日までに、コアCPIが年率2%上がらなければ辞職するという公約と理解していいだろう。

原油価格とドル高は昨年でピークアウトしたので、これからはコアとコアコアが(昔のように)近づいてゆくだろう。コアCPI上昇率は今の水準ぐらいがピークで、消費税の影響を除くと1%前後に収斂するものと思われる。これは国民にとっていいことだが、岩田氏にとっては不吉な現象である。出処進退は潔くしていただきたいものだ。