きのうの小保方さんの記者会見は話題になりましたが、小学生のみなさんには何のことかわからなかったと思います。大人でもわからないけど、きくのは恥ずかしい人もいると思うので、超簡単に説明しましょう(これはあくまでもこども版ですから、「厳密じゃない」などと突っ込まないように)。
理化学研究所の調査報告書では、二つの点を問題にしています。まず下の電気泳動の写真については、理研の報告書では「改ざん」があったと認定しています。改ざんとは、理研の規定では「データや研究結果の変更や省略により、研究活動によって得られた結果等を真正でないものに加工すること」なので、これが改ざんに当たることは間違いないでしょう。
次に下のテラトーマ(がん細胞のようなできもの)の写真も小保方さんは「悪意はない」といい、「研究会で使ったパワーポイントの図をまちがって使ってしまった」といっていました。これも「悪意」ではないとしても、ねつ造とは「事実ではないことを事実のようにこしらえる」(『広辞苑』)という意味なので、ねつ造といえるでしょう。
これは小保方さんの処分にかかわる問題で、みなさんには関係ありません。大事なのはSTAP細胞がほんとにできたのかということです。これについて、小保方さんは「200回以上実験に成功した」といいました。記者団がくわしくきかなかったので具体的な中身がわからないのですが、STAP細胞は次のようなやり方で、普通の細胞(体細胞)を弱酸性の液に25分つけて1週間ぐらい培養したらできるといわれています。
この手順だと一つのSTAP細胞ができるのにすくなくとも1週間はかかるので、毎週やっても200回成功するには4年以上かかります。たぶん小保方さんは「細胞が5個できたら5回」というように数えたのでしょう。STAP細胞ができたら、いろいろな細胞に分化できることを示す緑色の光が出ます(これをOct-4陽性反応といいます)。
しかしある細胞が緑色に光っただけでは、STAP細胞かどうかはわかりません。細胞が死にかけのときも緑色に光ることがあり、ES細胞(受精卵からとった幹細胞)でも同じ現象が起こるからです。小保方さんは実験ノートもちゃんとつけていなかったようなので、緑色に光った細胞をみんな「STAP細胞ができた!」と思ったのかもしれません。
でもES細胞とSTAP細胞はちがいます。ES細胞の中の遺伝子には分化した痕跡(TCR再構成)が見られないのに対して、STAP細胞には見られるのです。小保方さんの手元には元のデータがあるので、理研や外部の人がチェックすべきです(これも改ざんされている可能性がありますが)。
小保方さんも200回もできたというのだから、その1回分のデータでもいいから、ちゃんと公開すればいいのに、実験ノートもコンピュータも理研に全部みせていません。これで「信じてください」といっても無理です。サンプルも冷蔵庫に入っているそうですから、理研がチェックすればわかるはずです。
緑色に光るだけなら珍しいことではないのですが、この細胞が本当に体細胞に刺激を与えてできたのか、死にかけていたのか、それとも小保方さんがこっそりES細胞とすりかえたのかはわかりません。まわりの専門家がそれをチェックしなかったのは困ったものです。科学者のおじさんも、かわいい女の子には甘いんでしょうか。
追記:彼女の補充説明によると「培養後に、多能性マーカーが陽性であることを確認して、STAP細胞が作成できたことを確認していました」とのことなので、やはりOct-4陽性反応しか確認してないようですね。単純な自家蛍光の疑いが強まってきました。この可能性は専門家が最初から指摘していたのに、2時間の記者会見で誰も質問しなかったマスコミはどうなってるんでしょうか。