危うい不安定要因になりつつある「大戦争を知らない国々」 --- 岡本 裕明

2014年04月15日 17:27

世界はGゼロ、つまり圧倒的支配力を持った国家が存在しない均等で平等な国家体制に向かっています。このブログでも何度も書いているのでいつもお読みの方はお分かりいただいているかと思います。一方、このGゼロがはたして世界を平和にするのかという点に関しては慎重にならざるを得ないかもしれません。


世界195か国が均等で平等で「大人の対応」ができるのか、といえばこれはほぼ不可能であると断言してもよいと思います。経済的成熟具合、社会的安定感、民族問題を含めた歴史的背景を考えればそれぞれの国家が進化、発展過程の中でそれぞれが最重点におかねばならない課題は当然あり、その目標に向かって走れば当然ながら他国との軋轢がおきます。

ですが、アメリカは腰が引け、国連は機能しないという中で安定した世界平和が維持できるかといえば私はリスク含みになってきたと思っています。

4月15日の日経の経済教室、田中均氏の寄稿の中でまさにこの点を指摘した部分を紹介します。

「Gゼロ時代を本質的に特徴づけているのは、異なるベクトルを持つ2つの要素である。1つはグローバリゼーションの結果、各国の相互依存関係が圧倒的に深化したことである。もう1つは国内課題への関心がナショナリズムの高揚と政治のポピュリズム的傾向につながっていることである。相互依存関係の深化は各国が相争うことへの歯止めになると考えられるが、ナショナリズムの高揚は各国の自己主張の強まりとなる。」

私が気にしているのは田中氏のこの最後の「各国の自己主張の強まり」という点であります。

歴史は繰り返す中でこの自己主張をめぐるぶつかり合いが過去の戦争に繋がったとすれば、このナショナリズムの高揚はほとんどの人が気にしない小さなものかもしれませんが、早期がんのようなもので摘出しなければなりません。ナショナリズムの高揚はGゼロの時代に突入すればそれまでの「制約」が取れてしまうことになり、今までとは違ったバイアスがかかりやすいのではないでしょうか?

田中氏はウクライナの例を挙げていますが、私はそれ以外にも北朝鮮、中国、アフリカの一部諸国などは要注意だと思いますし、ほかにも休火山的国家はありますので寝た子を起こすことになりかねません。

私はかねてから先進国では戦争は起こらないと主張してきました。それは過去の戦争を通じてその悲惨さを十分経験、継承され、広く国民が一定水準の教育を受けているからであります。ところが例えばアフリカ諸国のように大型戦争に巻き込まれていない地域はまだまだ要注意であり、先進国はそれらの国で代理戦争をしばしば行うこともあり、この先不透明感があることは確かであります。

私はGゼロの発想はあまり好きではありません。195人の会議で皆が同じだけの発言権と敬意と尊厳を持ってもらえるかといえばそんな社会はかつての歴史で一度もなく、今後もないはずです。動物や昆虫の世界でも均一な集団はないのですからエゴの固まりの人間社会にそれが出来るとは思えないのです。

とすれば、一見平和的で支持されやすいと思われるGゼロはかなり不安定な前提の上に立っているということを認識しなければいけないでしょう。

私はアメリカが一定の指導力を発揮し続けることが今はまだ必要だと思っています。基軸通貨のドルは世界の安全通貨であるし、英語は公用語であります。世界の視点はアメリカ発になる場合が多いのです。オバマ大統領の平和主義とアメリカの現実を考えた施策は理解できるものの世界の中のアメリカという立場は一大統領が変わったぐらいで突然色が変わるものではなく、段階と周到なプランが必要だと思います。アメリカではそのプランはまだ十分に練られていないような気がします。

今日はこのぐらいにしておきましょう。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2014年4月15日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。

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