サンクコストって何?

2014年04月24日 00:09

サンクコスト(埋没費用)というのは、言葉はむずかしそうですが、意味は「取り返しのつかないコストを考えてはいけない」という簡単なことです。

みなさんがミュージカルを見に行ったら、つまらなかったとしましょう。お父さんが「S席のチケットで高かったので、もったいないから最後まで見よう」といったら「そんなことしてもお金は返ってこないよ」と注意してあげましょう。チケットを返してもお金は返してくれないので、つまらないミュージカルは最後まで見ないで帰ったほうがいいのです。このチケット代をサンクコストといいます。

いいかえると、コストを計算するとき考えるのは、これからの行動で変えられるコストだけだということです。もしミュージカルがキャンセルされたら、チケット代は返してくれるので、劇場まで行って返してもらう電車賃よりチケットのほうが高かったら行ったほうがいいでしょう。この場合のチケット代は、これからの行動で変えられるからです。

大島堅一さんは、農協新聞のインタビューで「財政支出(国民の税負担)を足さなければ本当のコストは見えない」といって「一般会計エネルギー対策費とエネルギー特別会計の費用項目を可能な限り電源別に再集計して積み上げ、これを当該年度の発電量で割って」原発のコストを計算しています。

これはサンクコストの錯覚です。原発を建てるときはたくさん税金がかかったかもしれませんが、それはもう建物に使われたので、今の原発をどうやっても返ってきません。これから原発を建てたいという電力会社はないし、そう思っても建てることはできないので、過去の技術開発費や立地対策費は考えてはいけないのです。

ましてそのコストを、原発を「再稼動」するかどうかの基準にするのはバカげています。原発を動かしてかかるのはウランなどの燃料と安全管理のコストだけで、キロワットアワーあたり1円~2円と圧倒的に安いのです(だから大島さんには都合が悪いんでしょうが)。

これはとても簡単な話ですが、よくある錯覚です。たとえば核燃料の再処理は、もう必要なくなったのに「ここまで工事したんだから最後までやろう」といってたくさんのお金が使われていますが、これもサンクコストです。ウランは9000年分ぐらいあるので、それを長もちさせる再処理は必要ありません。もったいないと思っても、再処理工場の工事はやめたほうがいいのです(大島さんの計算はサンクコストを区別してないので間違っています)。

これはビジネスをしている人には当たり前だと思いますが、コスト意識のない政治家や大学の先生には直感的にピンと来ないのでしょう。それはしょうがないのですが、そういう人が法律をつくったり『原発のコスト』なんて本を書いたりするのは困ったものです。

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池田 信夫
アゴラ研究所所長 青山学院大学非常勤講師 学術博士(慶應義塾大学)

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