問題だらけの日本の投資信託 ~ コストはアメリカの2倍 --- 内藤 忍

アゴラ

最新の証券アナリストジャーナル(2014年5月号)に、モーニングスター代表取締役社長の朝倉智也さんが「日本の投資信託が抱える課題」という論文を掲載しています。この雑誌は、証券アナリストのための専門誌ですが、内容は資産運用しているすべての投資家にとって有用だと思います。


書かれている内容を私なりにまとめると、日本の投資信託は

世界の中でも極めて高コストで
投資家より販売会社を重視し
一時的な人気テーマを追い求め
情報開示に遅れ
アクティブファンドを過大評価している

ということです。

1つ1つ説明していきましょう。

1.世界の中でも極めて高コスト
データによれば、国内投資信託の信託報酬(年間の管理コスト)は2004年に平均で1.37%だったのが、2013年には1.50%。年々上昇しているのがわかります。アメリカの数字をみると、2001年に株式型で0.99%、債券型で0.75%だったのが、2012年にはそれぞれ、0.77%と0.61%と低下傾向にあります。日本の投資信託の保有コストは、アメリカのほぼ倍ということです。

2.投資家より販売会社を重視
信託報酬の配分方法を見ると、残高が大きくなると販売会社に厚く報酬が支払われるファンドが多くあります。日本の投資信託は、人気化して残高が大きくなればなるほど、投資家にではなく、販売会社に還元される傾向があるのです。

3.一時的な人気テーマを追求
日本の残高の大きなファンドベスト10を見ると、すべてが毎月分配型。そして投資対象はハイイールド債券や豪ドル債などの高金利債券やREITのものばかりです。このような偏った投資信託ばかりが投資家のポートフォリオに組み入れられているのは、販売会社の販売方法に問題があると言えるのです。

4.情報開示に遅れ
日本の投資信託ではファンドマネージャーの名前や経歴、運用実績などが開示されていません。アメリカではファンドマネージャーが自分のファンドにいくら投資しているかが開示されているそうです。運用責任者のファンドへのコミットメントがわかる重要なデータと言えます。

5.アクティブファンドを過大評価
一般に高コストになっているアクティブファンドの中には、コストだけが高いのに運用方法がインデックスファンドに極めて近いものがあります。特に残高が3000億円を超えるような大型ファンドになるとその傾向が強いことが指摘されています。

先週刊行した新刊『究極の海外不動産投資』は、海外不動産がテーマですが、冒頭部分で金融資産と実物資産の組み合わせ方法についても言及しています。その中で、39ページに私はこう書きました。

「金融市場は、効率性が高い市場と言えます。このような市場においては、市場平均を狙っ
たインデックス運用によって平均点を確実に取りにいくのが合理的です。具体的には、信託報酬が年間1%以上かかるような高コストのアクティブファンドは使わずに、年間0.4~0.6%のインデックスファンドを組み合わせて運用します。」

NISAの導入で新しい投資家が市場に参入してきましたが、金融機関が個人投資家を合法的にカモにしている状態が変わらなければ、市場はいつまで経っても成長しません。

手数料優先の金融機関にも問題がありますが、個人投資家が行動するだけで業界を変えることは可能です。そのためには、個人投資家の金融知識を高めるための金融教育の充実が必須だと再認識しました。

編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2014年5月3日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。