今年3月に国土交通省が発表した分析は、日本のこれからに暗い影を落としています。
日本の約38万平方キロメートルの国土を1平方キロメートルごとに約38万ブロックに分け、それぞれの人口推移を計算してみる。すると、現状は約18万平方キロメートルに人が住んでいるが、2050年にはその2割で人がいなくなり、6割で人口が半分に減るという予測になりました。無人の地域は全体の約53%から約62%に広がる見通しです。
このように人口減少が、国民の高齢化、社会保障制度の脆弱化などにつながる大きな問題であることは、政府だけではなく国民の間でも認識されつつあります。
人口減少に対して、出生率を向上させる政策を立てたり、移民を受け入れることで人口増加につなげようという動きがありますが、果たして意味があるのでしょうか?
出生率が上昇し、移民が増えて日本の人口が増えたからといって、現在の日本を取り巻く問題が解決するとは、私には思えません。
問題は、「国民の数」ではないと思うからです。
国民に高度で有意義な教育を提供していくことが、国としての豊かさを維持するための一番の解決策ではないかと考えます。
「養ってもらう人」が必要とする社会保障制度の維持を目指すのではなく、「自分の力で稼げる人」を増やすのです。子供だけではなく、社会人に対しても、他の国の人たちと競争できるだけ
の、高い能力とスキルを身に付けた人たちを育成する仕組みが必要です。
「稼ぐ力」を身に付ければ、人に頼らず自分で生きていくことができます。自分のことは自分でできる人が増えれば、年齢や環境で自立が難しい人への社会保障を今まで以上に手厚くできます。
しかし、国が職業訓練学校や学校教育を充実させようとお金を費やしても効果はそれほど大きく無いと思います。なぜなら、国には市場が何を必要としているのかを情報収集する力は弱く、効果的な教育の仕組みを生み出す能力に劣っているからです。
例えば、学校教育では、今や公教育よりも民間の塾の方が圧倒的に品質の高い教育を提供しています。学校の先生が塾のマニュアルを使って教える時代なのです。すべての公教育に意味が無いとは言いませんが、コンテンツは民間の力を借りるべきだと思います。
民間教育にはお金がかかります。塾に行くのも、社会人が資格の学校に行くのも、費用はバカになりません。そこで、そのような教育への投資を促進する方策として、
教育に関する支出はすべて「必要経費」として認める
というのはどうでしょうか。教育への投資を必要経費として認めることで、教育にお金をかければかけるほど、税金を減らせるようにするのです。しかも、自分をどんな教育に投資するかは自分で真剣に選んで決めていく。
中国のことわざに「ある人に魚を一匹与えれば、その人は一日食える。 魚の取り方を教えれば、その人は一生を通して食える」というのがあります。
人口減少の日本で今やらなければいけないのは、一人一人に魚の取り方を教えることではないかと思います。
編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2014年6月3日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。