山城火災海上の御案内 --- 山城 良雄

2014年06月13日 08:21

最近、ワシは商売を始めようと思ってる。損害保険会社、山城火災海上や。今回は特別に、何かとお世話になってるアゴラの皆様に、ビジネスモデルの一端を紹介しよう。コピペのご用意はよろしおすか。

押しの強さと粘着質の示談交渉がウリの自動車保険か? って。違う違う、そんなセコイ客は相手にせん。ズバリ原子炉保険専門の会社や。既存の保険会社が尻込みしている分野に、あえて突入するで。


対象はレベル7以上の過酷事故のみ。保険料は一基一年あたり、そうやなぁ~、10億ほど貰っとこか。高いってか? ……ほな5億でどや? ……再稼働の目処も立たへんで困ってるというなら従量制もある。1kw時あたり1円でええ。契約してくれたら、「節電してるやつをドツキ回す」というサービスもするで。

ワシのことやから、事故がおこったら真っ先に逃げると疑われるかもしれんが、そんなことはせん。会社立ち上げたら、営業部門だけ国内に残して、最初からオフショアに行っておく。クライアントの発電所には複数台の線量計を装備し、地球の裏側からモニターしておき、値が一定以上になったら、自動的に会社が消える。逃げ回る手間がかからんでええ。

さて、アゴラのメンバーで誰か投資せんかな。最初に資本金が集まったら、発電所回って営業する手間が省ける。即時、オフショアに直行や。会社は3分で消滅。ウルトラマンなみやで。

保険は信用が第一。ことがおこった時に保険金が降りないリスクが少しでもあれば、そんな会社と誰も契約なんぞせん。やっぱり、外資ならア〇コ、国内なら〇井〇友あたりがええと誰でも思うやろ。

そやけど、もし原発保険があったとして過酷事故でも金は降りるんやろか。仮に、福島第一の事故の損害総額は約10兆円(ここでは1兆円以上100兆円以下ぐらいで考えておいてくれ)と言われているが、今後、同じ規模の事故が起きたら、こんな金、誰が払えるねん。

どんな保険会社でも単独を背負い込めば、バーゼル3の自己資本比率なんぞ簡単に吹っ飛ぶ。それどころか、おそらく債務超過。目が血走った客の長い列が、瞬時に窓口に出来る。10兆円分のトランクを持って、列の最後尾に並んだ電力会社の兄ちゃんなんぞ袋だたきや。

米国あたりの会社なら、国中の弁護士を集めて、「保険金支払いの必要が無い事案である」と言い出すやろ。原賠法を使えばかなり頑張れる。結局、これやったら、お安い分だけ山城火災海上の方が、まだ可愛げがあるように思うがのう。

原発事故のリスクがこれだけ議論されているんやから、世界中の保険屋さんが商品を考えているはずや。うまいビジネスモデルが見つかれば一攫千金。そやけど、いまのところ、それらしい商品の話は聞かん。

どっかの会社が単独で始めたら、電力会社と契約した段階で、かなりの出資者が逃げ出しかねん。実際のリスク以上に、こういうヤヤコシイ商売をするメンタリティーが嫌われる。この説に反論したいなら、まずワシの山城火災海上に出資してから考えてみてくれ。安い授業料やと思ってな。

国か自治体が音頭を取って企業連合を組むとしても、さて、どうシステムを構築するか。イギリス伝統のロイズなんぞのように再保険・再々保険でガッチリ組み建てるか。それとも、サブプライムで名をはせたモノラインでリスク分散と行くか。けれども、よう考えたらどんな仕掛けを作ろうが、10兆円では結局は金の出所がない。

おまけに、事故が一段落したあと、その原発が保険に入っていたと知れたら、あっちこっちで訴訟が始まる。取りっぱぐれないようにするにはスピードが肝心、被災者同士でヨーイドンや。原賠法、電力会社の過失割合、風評被害。頭の痛い争点がてんこ盛りの上にロクに判例もないから、えらい時間がかかる。

裁判の相手は、みんな被災者や。保険金を値切りに行く訴訟で、世論とマスゴミがどっちの身方になるか、わかりやきった話。弁護の引き受け手を探す事すら大変やろ。正直、やってられんわな。

以前、アゴラで議論になりかけた、原発保険はなぜ存在しないか、という議論があったので、以上のようにワシなりに考えてみた。

要は、確率計算以前に、損害のスケールが保険会社の資本規模と比べてデカ過ぎるから、保険の意味がなくなってしまうということや。一方、昔の安全神話のように「事故は絶対におきない」と考えるなら、今度は別の意味で保険が必要なくなる。どっちにしろ、民間ビジネスは成立せん。

過酷事故の損害賠償をどうするか。「しない」「必要ない」「考えない」などの選択肢もありうると思うが、もし賠償をする気なら、民間保険会社以外の賠償のスキームを、誰かが作るしかないはずや。

近隣住民が「ここがハッキリせん限り再稼働は絶対に認めん」というのは、ある意味で筋の通った要求や。もし、損害賠償が免責されているなら、原子力発電は民間のビジネスとは、とても言えないやろ。この点を、専門家はどう考えておるんやろな。

今日はこれぐらいにしといたるわ。

帰ってきたサイエンティスト
山城 良雄

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