長岡半太郎から続く? 理研の「錬金術」研究

2014年07月24日 08:20

「錬金術」というのは、主に中世ヨーロッパで流行した「研究開発」です。無機物、有機物に限らず、金以外の自然界のありとあらゆるものから金を作り出す作業。そのほとんどは当然ながら成果を見ずに死滅したんだが、こうした行為から現代につながる化学などの自然科学が発達した、と主張する人もいます。

日本にも大まじめに錬金術に取り組んだ研究者がいました。戦前日本の物理学会を代表する長岡半太郎です。現在の原子模型の元祖である「土星型原子モデル」を提唱し、東京帝国大学理学部で多くの後進を育てた人物。1926(大正15)年に60歳で帝大を退官した後、長岡は理化学研究所で研究を続けたんだが、帝大教授時代の1924(大正13)年に「水銀から金を作り出す技術」を発表。同年、ドイツの研究者も水銀からの「錬金術」に成功したと発表しています。


「錬金術」と聴くと眉にツバをつけて聴きたくなるような話なんだが、長岡半太郎は日本物理学会の重鎮であり、理化学研究所もその研究をバックアップしていた、というわけです。理化学研究所はときとして、こうしたマネタイズにつながる研究に過度に寄りかかる姿勢を見せたりする。「STAP細胞」騒動の背景も同じなのかもしれません。

いずれにせよ、長岡の「錬金術」は必ずしも眉唾物とばかりは言えず、金と水銀は原子番号で79と80の隣同士です。水銀の水素原子をどうにか外すことができれば、見事、金になる、というわけ。驚くべきことに長岡はこの「錬金術」に成功していたらしい。ただ、得られる金が、高圧放電などで投下されるエネルギーに比べて微々たる量だったので、とても採算の取れるものではなかった、という落ち。

表題のリリースは、理化学研究所と東大などの共同研究チームが、金やウランなどの重たい元素がどうやって作られたか、そのヒントを探り当てた、というものです。この宇宙を形成している多種多様な物質は、多種多様な元素で作られている。水素やヘリウムなどの軽い元素は、宇宙創生のいわゆる「ビッグバン」の時に作られたらしいんだが、金やウラン、レアアースなど希土類元素といった重い元素は恒星内部で作られたと考えられています。

この研究によると、中性子星の合体によって重い元素ができたのではないか、という根拠が示された。我々の太陽系の太陽のような恒星にも「寿命」があり、こうした恒星の中でも質量の大きなものの最晩年ともいえる状態が中性子星なんだが、より重い中性子星がある重さの限界を超えるとブラックホールになる、と考えられています。

恒星がその生涯を終える間際の中性子星同士が合体するという状況で、いったいどんなことが起きるのか、なかなかわからなかったんだが、このリリースによれば理研のスーパーコンピュータ「京(けい)」を使ったシミュレーションにより、金などの重い元素の由来や重力波の発生源など、その決定的な証拠をつかみたい、としています。理研の「錬金術」研究。長岡半太郎から連綿と繋がって、こんなところに残っていたんでしょうか。

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スーパーコンピューターを使った中性子星合体の数値シミュレーション。左は二つの中性子星が合体する瞬間で、右は合体から8ミリ秒後の様子(距離のスケールの違いに注意)。上は物質の密度の対数値(g/cc)、下は物質中の中性子の割合(%)。右下の黄色からオレンジの渦状部分で金やウランなど、青から水色の部分で銀やレアアースなどが作られる(提供:理化学研究所)。

理化学研究所
金やウランなどの重い元素は中性子星の合体で作られた可能性が高い


Most Wearable Technology Has Been a Commercial Failure, Says Historian
io9
ここんところ映画ではやってる3Dは、すでに100年も前に出現した技術を応用しただけのシロモノです。目新しさは何もない。電気自動車(EV)にしても内燃機関とほぼ同時期に現れ、陳腐化して消えていった技術。この記事では「ウェアラブル」の技術もけっこう昔からあり、商業的には失敗の連続だった、と書いている。ここんところ話題になってる「ウェアラブル」ガジェットも同じ運命をたどるんでしょうか。

Could This Old Warplane Really Shoot Down MH17?
POPULAR SCIENCE
ウクライナでミサイルに撃墜されたと考えられているマレーシア航空14便について、ウクライナとロシア両国が双方とも相手方の犯行だと水掛け論が続いています。ウクライナ側はロシア製の地対空ミサイルが、ロシア側はウクライナ軍のSu-25の攻撃が、と非難合戦の様相を呈している。この記事によると、ウクライナ軍のSu-25は旧式機でマレーシア航空17便の高度で攻撃できるほどの能力を持っていないのではないか、と書いている。不可能ではないが可能性は低い。Su-25は戦車などを攻撃するための地上攻撃機で高高度飛行能力は備えていません。記事では、同機のWikipediaがロシア内からのIPアドレスで編集され、高高度能力をかさ上げした、と書いている。
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ロシア軍のクビンカ(Kubinka)空軍基地におけるSu-25。本来なら博物館行きの機体らしい。by Dmitry A. Mottl, via Wikimedia Commons

Anti-Smoking Policies May Also Fight Suicide
livescience
喫煙の害はいろいろ言われているんだが、この記事では「心の健康」も害するかもしれない、と書いています。米国の調査によると、喫煙と自殺率には相関関係があったらしい。正確に言えば、たばこ税の税収が上がると自殺率が下がる、ということのようです。短期的に喫煙は不安や抑うつなどを緩和するんだが、長期的にみるとそれが次第に増幅されて悪循環に陥ってしまう。また、ニコチンがこうした精神的な不安定要素の原因なのでは、と考えている研究者もいるようです。

Israel may have committed war crimes during Gaza offensive, UN says
the guardian
ウクライナのマレーシア航空機撃墜事件の裏側というか表側というか、話題がそちらへ逸れているのをいいことに、イスラエルがパレスチナ自治区ガザへの地上戦行使を激化させているようです。もちろん彼我には圧倒的な軍事力の差がある。パレスチナは文字通り「蹂躙」されています。この記事では、イスラエル軍が戦争犯罪を犯した可能性があり、それを国連「人権理事会(United Nations Human Rights Council、UNHCR)」が調査し始めた、と書いている。具体的には、赤十字の活動を妨害し、学校や病院などへ「無差別攻撃」している、という容疑です。


アゴラ編集部:石田 雅彦


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