朝日新聞はいかに放射能デマを拡散してきたか

池田 信夫

朝日新聞の慰安婦デマは氷山の一角だ。彼らは戦時中からでたらめな報道を続け、戦後もその総括をしないで経営を続けてきた。特に最近、大きな悪影響を与えているのが「プロメテウスの罠」の放射能デマだ。2011年12月2日の記事は「我が子の鼻血、なぜ」というタイトルで、こう書いている。彼らのやり口がわかるように、長文で引用しよう(改行は省略)。

福島から遠く離れた東京でも、お母さんたちは判断材料がなく、迷いに迷っている。たとえば東京都町田市の主婦、有馬理恵(39)のケース。6歳になる男の子が原発事故後、様子がおかしい。

4カ月の間に鼻血が10回以上出た。30分近くも止まらず、シーツが真っ赤になった。心配になって7月、知人から聞いてさいたま市の医師の肥田舜太郎(94)に電話した。肥田とは、JR北浦和駅近くの喫茶店で会った。

「お母さん、落ち着いて」。席に着くと、まずそういわれた。肥田は、広島原爆でも同じような症状が起きていたことを話した。放射能の影響があったのなら、これからは放射能の対策をとればいい。有馬はそう考え、やっと落ち着いた。周囲の母親たちに聞くと、同じように悩んでいた。

「原発事故後、子どもたちの体調に明らかな変化はありませんか」。すると5時間後、有馬のもとに43の事例が届いた。いずれも、鼻血や下痢、口内炎などを訴えていた。

こうした症状が原発事故と関係があるかどうかは不明だ。かつて肥田と共訳で低線量被曝(ひばく)の本を出した福島市の医師、斎藤紀は、子どもらの異変を「心理的な要因が大きいのではないか」とみる。それでも有馬は心配なのだ。

首都圏で内部被曝というのは心配しすぎではないかという声もある。しかし、母親たちの不安感は相当に深刻だ。たとえば埼玉県東松山市のある母親グループのメンバーは、各自がそれぞれ線量計を持ち歩いている。(前田基行)

「関係があるかどうかは不明だ」とか「心配しすぎではないか」などと逃げ道をつくった上で、全体としては「福島の事故によって町田で鼻血が出る」という印象を与えている。

放射線を浴びた人に、鼻血が出ることはありうる。原爆で一挙に大量の放射線を浴びる急性被曝では、幹細胞が死んで血球の減少や下痢、血便などが起こるが、この場合はほぼ即死だ。低線量被曝によって鼻血が出ることは、医学的にありえない。まして福島の事故によって、300km近く離れた町田で鼻血が出る可能性はゼロである。

もちろん子供に鼻血が出ることはある。43例ぐらい見つけるのは簡単だ。「鼻血が出た」という事実と「原発事故が起こった」という事実を並べて、このように恐怖をあおると、子供を心配している主婦が信じるのは当然だ。

前田基行という記者は、この記事で何をねらっているのだろうか。おそらく彼も、肥田の話に医学的根拠がないことは知っているだろう。しかし連載は何かで埋めなければいけない。「お母さんたちは迷っている」という母親の心配をテーマにすれば逃げ道がある…そう考えたのだろう。

これは「軍の関与」という曖昧な言葉で、日本政府が慰安婦を拉致したという印象操作をしたのと同じ手口だ。植村記者の場合は「挺身隊の名で強制連行」という明らかな事実誤認があったために逃げ切れなかったが、「プロメテウス」は巧妙に予防線を張っている。そういう知恵だけは発達したわけだ。

アゴラではこの機会に、朝日新聞の誤報について読者のみなさんの指摘を募集します。具体的な記事の誤りを指摘してください。