リニア新幹線の経済効果はどこにあるか --- 岡本 裕明

2014年08月30日 16:43

JR東海がリニア新幹線着工の認可申請を行いました。総工費5兆5000億円越えの巨大プロジェクトは品川と名古屋を結ぶ第二の大動脈となり将来的には大阪まで伸びる計画になっています。

さて、この経済効果を語る場合、二つの効果を別々に考えなくてはいけません。それは工事期間中の経済効果、つまり、5兆5000億円の直接コストと誘発される様々なビジネスを通じた経済効果、およびリニア完成がもたらす経済効果であります。


まず、工事中の間接的経済効果は、例えば工事資材の仮設置き場が必要ならその不動産の所有者は賃料が入るでしょう。工事に従事する人たちが泊まる仮設宿舎のないし旅館は数年間にわたり潤います。それこそ、地方の飲み屋が突然にぎわったりするのです。建設資材の大量需要や作業従事者の不足から工事単価の上昇を招き、工事代金のインフレ傾向にも拍車をかけるかもしれません。

これらは工事期間中の経済効果や影響であります。

では完成後についてはどうなのでしょうか?

通常は駅ができるあたりの不動産開発、ビジネスの誘致といった直接的なものから早い移動時間に伴う経済効率性の高まりといった間接的な効果もあります。

さて、東海道新幹線。新横浜、熱海、静岡、浜松、名古屋といった駅の周辺は観光、新都心、工場といった新しい産業が次々と生まれ東海道新幹線沿いに経済圏が新たに生まれていったとしても過言ではありません。「のぞみ」に乗っていれば気がつかないと思いますが、「ひかり」のように途中駅でちょこちょこ止まる列車に乗るとこれが思った以上に混んでいるのです。熱海なら観光客がわんさと乗りますし、静岡や浜松は地元企業の社員が業務で名古屋や東京に行くのに使います。つまり、途中駅から生まれる経済効果が抜群なのです。

ちなみに山陽新幹線に乗るとこれは激変します。つまり、途中の小さい駅は実に閑散としており、姫路、岡山、広島といった乗換駅ないし、地方都市への移動手段ということになります。少なくとも山陽新幹線で非主流の駅が開通後大きく育ったところはあまりないと記憶しています。

では、リニア。途中駅は相模原、甲府、飯田、中津川です。全長286キロのうち86%がトンネルであることも気になります。なぜならば東海道新幹線は窓からの景色を堪能できますが、山陽新幹線は5割以上がトンネル。ここから類推すればリニア新幹線は山陽新幹線と同様の都市間移動手段という扱いになるかと思います。

その「都市」ですが、相模原。ここは基本的に住宅地です。それ以上でもそれ以下でもありません。
甲府。盆地で甲州ワイン、石和温泉などがありますが、産業のある町というイメージではありません。
飯田。人口10万人ちょっと。地元企業で名だたるところはありません。
中津川。人口はさらに下がり、8万人弱。山の中で産業としての広がりを持たせるのは難しい所です。

私から見るとリニアが目指すものは航空機と同じなのです。出発地と終着地だけの経済です。

しかも時を同じくして新幹線を時速最大400キロまで引き上げることに成功しそうであります。こちらの方も営業運転は2020年代となります。勝手な想像ですが、のぞみで東京名古屋間340キロを1時間40分で結んでますが、カーブなどの減速を考えても1時間20分ぐらいに縮まるのではないでしょうか? とすれば、リニアとの差は40分。周辺経済効果も含め、さてどうなのか、といえば案外微妙な気もします。

ちなみに私がJRの社長ならリニアではなく、既存の新幹線が技術的に時速500キロ程度まで引き上げられることを鑑み、カーブエリアの改善などで既存資産のバリューアップに務めます。

さて、これで喜ぶのは建設会社だけなのか、はたまた思わぬ経済効果をもたらすのか、結論は当面お預けとなりそうです。

今日はこのぐらいにしておきましょう。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2014年8月28日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。

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