ウクライナはプーチン大統領が生殺与奪の権を握る「火薬庫」 --- 岡本 裕明

2014年09月03日 09:45

「欧州が第2次大戦以来遭遇したことのない大きな戦争が、われわれの国にやってきた」(ブルームバーグ)と述べたのはウクライナの国防大臣であります。ウクライナは親ロシア派との局地戦だったものが、もはや堂々と親ロシア派と共に戦いつつあるロシア軍がその標的をウクライナにまで向けているとしています。ロシア正規軍は1600人も入り込んでいるとされています。


正直、これが本当だとすればプーチン大統領の行動は全く持って読めないことになります。大統領は8月31日のテレビ放送でも「東部国家」という言葉を使っており、それまでのウクライナの連邦制など比較的地域独立性の高い制度から「国家」という更に進んだ形態を示唆しており、大統領の発想がよりエキストリームな方向に進んできたことを匂わせています。

ウクライナ問題を明白にさせる一つのアプローチは「マレーシア航空を誰が撃墜したか?」という点であります。調査の結果を待たねばなりませんが、この話題が確かに最近パタッと止まっている点は腑に落ちません。元NHKモスクワ支局勤務で現在ジャーナリストをしている小林和夫氏も同様の指摘をしています。確か、撃墜直後、アメリカは「証拠がある」としていました。ならば、それを明示し、コトの白黒をつけてしまえば問題の展開は変っていたかもしれません。ところが最近は調査の行方の話がパタッと途切れています。

ちなみにロシア側はウクライナ軍が撃墜したという主張を繰り広げており、ロシア内のコンセンサスもそうなっていると認識しています。つまり、何が正しいのか全く分からない状態ですが、これには必ず答えがあるはずですから既に一部の人には分かっていてもおかしくない気がします。

その焚き付け役のアメリカは自国内の問題(19歳の無防備の黒人を白人警官が拳銃で撃った事件)でガタガタしています。勿論中間選挙も近くなる中、オバマ大統領の存在感そのものが薄くなりつつあります。むしろクリントン氏がその施策に対して「私ならもっとうまくできる」とチクチク述べているところにアメリカ国内の安定感の欠如を感じます。

このままロシア包囲網が西側諸国で進むとどうなるかですが、非常にまずい事態が起きるとみています。

まず、ロシアはガスパイプラインを通じてヨーロッパへの供給を止めるという策が可能です。これから冬に向かう中、それは冷えている欧州経済が凍り付くことを意味します。経済のグローバル化という点でも旧東ヨーロッパ諸国を中心に急速な景気後退を迎えることになります。

当然ながらマネーが資本という形で地球儀ベースで動き回る今、地政学的に関係のないウクライナ問題がとんでもない国で影響やとばっちりを受けることは大いにあるのです。思い出してもらいたいのはリーマン・ショックです。一番影響を受けた地域の一つはユーロ圏だったのではないでしょうか? アメリカの住宅ローン問題が欧州に波及したのです。それを考えればプーチンは世界経済をガタガタにするボタンをいつでも押せるということになります。

欧州側は経済制裁をさらに強めることになるでしょう。勿論、アメリカもカナダもオーストラリアも同調するはずです。その時、起こるのは強烈なブロック経済です。それも近年進むEPAや地域経済統合といった前向きのグローバリゼーションではなく完全な後ろ向きのブロック化です。中国はロシアとギブアンドテイクの関係で緊密な関係を築き、新たなる壁が生じる可能性は無きにしも非ずです。

今回のロシアの動きを作ったのは紛れもなくオバマ大統領の失策から来るものです。世界は自由にすると無秩序になるということが改めて証明されたわけです。世界に警官がいなくなり、取り締まる者がいなければ自論の展開と力による進攻はいかにも簡単なものであることを見せつけたと言えましょう。

この問題はウクライナの国内問題で収まるはずでしたがボタンを掛け違えたようです。

今日はこのぐらいにしておきましょう。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2014年9月2日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。

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