アップルも「引力」に逆らえないか --- 岡本 裕明

2014年09月11日 23:34

ニュートンのリンゴは落ちるところにポイントがありますが、アップルの評価はどのようなものなのでしょうか?

iPhone6と腕時計型の新型ディバイス、iWatchが発表されました。仕様などは専門の記事に任せますが、様々な思惑が取り巻いたこの発表会。まず株価でみてみると発表日、一時は4%強上昇したもののその日の終値は前日比マイナスで引けています。もともとアップルの株価は史上最高値圏にあるため、一定の株価刺激対策があるか収益がついて行かない限り高すぎると思われがちであります。


今回の発表で見たものは市場が事前予想していたものとあまり変わらなかったという点で自動車会社が新車を発表した程度のインパクトだったと言えるのでしょうか? ただ、今日の終値は前日比3%強上げていますのでこの新製品発表に対しては投資家はほぼニュートラルと考えられるかもしれません。

もちろん、私ごときがiPhone6が優れている、いないなどというつもりは毛頭ありません。記事を読む限り、多分、私もこれに乗り換えるだろうな、とは思います。ですが、どうしてもアップルが欲しいというよりアップルを使っていたからその流れに乗る、というイメージの方が強いのではないでしょうか? つまり、新たなるアップルファンを作り上げるだけの引力はなかったと思います。そういう点ではリンゴは引力に逆らえなかったという事になります。

アップル社に何を期待するか、多分、これが全ての答えなのだろうと思います。ジョブス氏がいた会社と今ではまるで違うのですが、その陰影を引っ張り過ぎている気がします。待たせるだけ待たせたiWatchも注目度は今のところ高くなさそうですし、もともと市場にあふれるほど出回っている時計型ディバイスについてその汎用性、マーケティングなどで各社試行錯誤が繰り返されている中、その基調トーンをアップル社も出し切れなかったように感じます。私から見れば市場からの期待感が先行しすぎて、無理やり発表したような気すらいたします。

新興市場の企業の株価が時として短期間に数倍に暴騰する理由はその会社の従来の枠を大幅に超える開発能力、技術力、販売力が期待されるからであります。逆に言えば「この会社からこの製品は期待していなかった」ともいえるのです。今100ドルを超えたアップルの株価がかつて長年安く放置されていたのは会社としてその存続の危機さえあり、市場の期待感が全くなかったことが大きいと思います。

多くのファンドや年金基金はアップル社の株式をそのポートフォリオに入れていますが、理由は企業への一定の評価であり、市場規模であり、発行株数であるからでしょう。それはアナリストなどの評価が安定し、既存の市場シェアや成長エリアから今後も一定の期待できると判断されているからであります。

この状態はアップルというリンゴはすでに木の上の方でなっている状態で今のところは落ちもしないけれど成長も木と共に緩やかに高いところに上がっていくということではないかと思います。

今日、こちらで会議があったのですが、10人ぐらいいるその人たちは皆、スマホをいじりながら会議に参加しています。どうみても会議の議題とは関係がなさそうで、テキストなりのチェックをしているのでしょう。スマホがここまで普及するとコモディティそのものであって、一般大衆はあまりに大きな変化を求めていないともいえるのです。良い例がウィンドウズ8が出始めた時でしょう。あれほど不評を買い、結果として昔風に戻した理由は製品に対するイメージは一旦つけばそれを変えることすら難しいということなのです。

カナダのブラックベリーはもはやその名前すら聞かなくなりつつありますが、カナダやアメリカでは根強い人気があります。理由はあのキーボードに慣れている人はあれがよいと思い続けているからなのです。同じことは日本のガラケーにも言えるでしょう。

スマホは各メーカー、それぞれのディファクトスタンダードを設定しました。今後、シェアの奪い合いはあるでしょうけれど市場の安定化は進んでくると思います。アップル社が引力に逆らい、新たなるジャンプをする気ならば市場が全く予見できないような新製品を投入し、開拓者メリットを取るぐらいの勢いがないと難しいでしょう。

かつてマイクロソフトが歩んだ道とアップルが歩んでいる道は今のところ重なっているようにみえます。

今日はこのぐらいにしておきましょう。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2014年9月11日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。

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