日本経済の真に効果的な処方箋とは --- 岡本 裕明

2014年11月05日 10:51

市場は日銀の金融緩和の余韻をまだ楽しんでいるようです。前にも書きましたが、私にはこれは単なる消費税引き上げの援護射撃にしか映りません。そしてアベノミクスで本当に必要としているのは「労働市場の自由化」ではないかと改めて強く思い始めました。

過去、引き上げるたびに政権が揺らぐほどのショックを与えてきた消費税。4月はアベノミクスというお守りでどうにか切り抜けましたが次回の引き上げ判断が12月に迫る中、討論が活発化してきました。その中で上げることを主張するグループは「(世界を含めた)コミットメント」「財政健全化」という言葉が並びます。


その財政健全化ですが、もっとズームアウトして単純に考えると日本国家のお財布で収入より支出が多いため、消費税で収入を増やそうと考えているわけです。通常、収入の多くは法人税や個人所得税でありますが、消費税ならばモノを購入することにより発生する税だから公平性がある、という論理です。つまり、貯金をたんまり溜め込んだリタイア層は所得税をもう払わずに済むけれどタダで社会の恩恵は受けているのはちょっとずるいので消費税という形で負担願いましょう、という事もいえるでしょう。

この場合、消費税をリッチなリタイア層だけに当てはめて考えればこれでよいのですが、20代から50代のワーキングエイジにとってはただでさえ負担の多い個人所得税、健康保険料、年金負担で手取りはわずか。しかも給与は上がらず。これでは消費税増税分は吸収できないというのがごく当たり前なのですが案外置き忘れられている理由であります。

そこで安倍首相は個人取得を増やすべくベアなど賃上げを経済団体を通じて協力要請、一部の企業はそれに呼応しておりました。しかし、ほとんどの企業が上げてもボーナスなど一時的な報酬でかわした理由は何でしょうか? 経営側からすればアベノミクスの効果が最終的に業界や自社にどれだけプラスに、そしてそれ以上にどのぐらい恒常的な改善を示すか、予断できないのであります。

理由の本質は急速に進むビジネス環境の変化であります。つまり、昨日繁栄していた企業が明日、だめになる時代になり、従業員にコミットしにくいという事かと思います。これが企業の給与増を阻む大いなる原因の一つではないでしょうか?

ところで最近、日本は本当に人不足なのか、という議論があります。ビル・エモット氏など一部専門家もそんなはずはないと記しています。多分ですが、雇用のミスマッチと硬直化が企業と従業員のフレキシビリティを奪ってしまい、グローバル化する世の中で労働市場が十分に対応していないのだろうと考えています。

例えば建設業界。いつまで繁栄が続くかといえばあと5年であります。それ以降は調整に入ります。ソフトウェアの会社も人が足りませんが、あと3、4年で大きなヤマを一回越えるはずです。どんな業界でもずっとまっすぐな右上がりを保てるようなものはありません。必ず、アップダウンがあるのです。企業経営者はダウンするとき、あるいは社会環境やビジネス環境が変わりその商品が売れなくなった時いつでも身軽に体制を変えるだけの柔軟性がないと投資もできないし、撤退すらできず、結果として果てしない価格競争を強いられるのです。

つまり、日本ではタブーである労働市場の自由化により賃金の硬直性も変るし、企業の思い切った投資も引き出すことができるともいえるのです。

欧州の多くの国がかつてない不況と失業に悩んでいるのは労働の硬直化であります。レストランでかなり年配の人がサーバーとして働いているのもそこに理由が潜んでいます。それは誰か辞めないと職がない、という世界であります。これは北米でもある世界です。例えば会計士の会社なら税務と会計がありますが、会計の方が専門だと人はなかなか辞めないから人材が流動化しません。学校の先生も辞めません。だからポジションが空かないのです。

グローバル化、ワーキングエイジに高いフレキシビリティとやる気を生み出し、企業は優秀な人材を確保しやすくし、投資環境を改善することができるのは本当は労働市場の自由化であります。ただ、これをやるのは簡単ではないのは十分承知しています。ならば、いわゆる日本独特の「新卒」の人だけにまずは当てはめたらどうでしょう? そうすれば学生は社会人になってから振り落とされないように否が応でも勉強するようになるでしょう。

極論のように思えますが、これぐらいしないと日本は変わらない、という事です。日銀の小手先のテクニックで舞い上がっているようでは若者が将来の日本に自信を持ち続てもらうには力不足だと思います。

今日はこのぐらいにしておきましょう。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2014年11月5日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。

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