若者の邪魔にならない年寄りに --- 井本 省吾

2014年12月12日 09:51

次世代の党の石原慎太郎最高顧問が政界からの引退を表明した。今回の衆院選での講演で「この選挙後に引退する。後継者にバトンタッチしたい」と明言した。石原氏は比例東京ブロックで名簿順位が最も低く、講演終了後に「最下位だから当選しないだろう」と語った。

これは良いことだと思う。石原氏のような政治家が日本には必要だと思っているが、すでに82歳。いつまでも政界にいると、若い人材が育たないからだ。


強力な大木は日本という森を維持する要だが、老木になると森を維持する力は弱る。若木に後を譲る必要があるのだが、老木が太い枝葉を広げたままだと、若木は思うように伸びない。老木が倒れることで、若木が育つ空間が広がる。

日経ビジネス・オンラインに掲載された解剖学者の養老孟司氏と建築家の隈研吾氏の対談(12月5日付)で、養老氏がこんなことを言っている(要約、抜粋)。

<今は地方だけでなく大都市も高齢化が進んでおり、むしろ若い人が多いのは田舎も田舎、限界集落に近い田舎だ。なぜか。年寄りがいないから>

<限界集落に若い人が入ってきて、そこが新たなスタート地になる。アメリカの西部開拓地がやっと日本にもでき始めている>

「年寄りがいなくなれば、若者が入ってくる」というわけだ。

<若い人にとって、年寄りって邪魔なんだよ。だって既得権を持っているでしょう。田舎で畑のいいところは全部、年寄り連中が持っている>

<年寄りが既得権を持っているから、ものごとが動かない。テレビで、農業問題を取り上げることがあるが、田舎のじいさんが「後継者がいなくて…」とこぼしている。「お前がいるからだろう」って俺は思うんだよね>

<年寄りって、いるだけで邪魔という面があるんだよ。若い人にとっては、うっとうしいに決まってますよ>

<僕は東大を辞めてから、ほとんど古巣には行っていませんから。年寄りが来たらうるさいだろうから>

インタビュアーが「有名企業でも、引退した重鎮が毎日来ちゃって、社員がお世話に困っている例を聞きます」というと、養老氏は次のように語る。

<そんなの年寄りの風上にも置けないよ。ちゃんと年寄りらしく生きる方法を考えなさい、って。(若い人の)邪魔にならないようにしましょうよ、ということですね。芭蕉や西行は、若い人たちの邪魔をすることなく、晩年までうろうろしていたじゃないですか。あんな感じがいいなと思って>

10年ほど前、大企業グループ内企業の現役社長と雑談していたおり、彼がこんなことを言っていた。

<グループが運営しているゴルフ場があるのだけど、そこにはあまり行きたくない。グループ企業の顧問などをしている元会長、元社長、元専務がたくさん来ていて、「よぉ、元気か」「最近はどうだ」と言われ、その都度、挨拶をしなければならない。堅苦しくて>。

なんで「社長にまでなって、ゴルフ場まで来てペコペコしなければならんのだ」というわけだ。

今は団塊の世代(私もその一人)以上の年寄りが日本中で大きな根を張り、枝葉を広げている。若木の邪魔をしないように心がけたい。

少なくとも、年金や医療などの分野で老人が優遇されすぎている現状は変えねばならない。社会保障以外でも映画館やスキー場、グリーン車など様々なところで、高齢者は割引特権を持っている。その分、若年層に負担がかかっている。

選挙では人口の多い高齢者の投票率が高いため、大半の政党が高齢者に厳しい政策を打ち出しにくくなっている。それを改めるところから始めねばならない。

石原氏が今まで、若者の邪魔をしていたとは思わない。むしろ、彼らを盛り上げたくて「次世代の党」という政党を立ち上げたのだろう。だが、強烈な個性をもつ存在そのものが、若者の遠慮や依存心を生み、強い「次世代」が育たないという懸念がある。

これからは作家、思想家として西行や芭蕉のように活動してもらいたい。


編集部より:この記事は井本省吾氏のブログ「鎌倉橋残日録 ~ 井本省吾のOB記者日誌」2014年12月12日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった井本氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方は鎌倉橋残日録 ~ 井本省吾のOB記者日誌をご覧ください。

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