箱根駅伝、青学優勝に拍手 --- 井本 省吾

2015年01月07日 10:58

今年の箱根駅伝は青山学院大学が初の総合優勝を果たした。それも往路5区以降、復路の最終区まで一度も首位を譲ることなく、2位の駒沢大学に10分以上もの大差を付けての完全優勝だ。駅伝では出場経験はいろいろあるものの5、6年前まではそれほどの実績はなく、新興大学と言ってもいい。

それだけに「え、あのチャラい学生の青学が?」と思った人は多いだろう。実際の青学には実直、勤勉な男子学生も多数いるだろうが、失礼ながら世の中ではきらびやかで軽いノリ、勉強よりカッコよく遊ぶ、というイメージが浸透している。


ネットを見ると、青学出身というヒロ氏自身がブログで「チャラい青学が優勝するそのわけ」を書いている。

<私はまず、監督の采配を挙げます。「重い玉を転がすイメージ」で「一旦転がったらあとは楽」と言い切る原晋監督は基礎を作りあとは選手を楽しませていたと思います。このリラックスした感じが青山のチャラいイメージとマッチすることは卒業生である私が太鼓判を押します。この監督と学校のイメージと学生の三位一体感が勝利へ結びつけたと思っています>

走ることを明るく楽しんでいるような青学選手の姿を、テレビを見ると、私もヒロ氏に同意する。駅伝で伝統ある大学の体育会系運動部では、監督がスピーカーを通じて選手の後ろから厳しい言葉のシャワーでハッパをかける。

駅伝は自分のところでこけたら、全体に響く。だから、厳しい監督のもとでは選手は悲壮な表情で走る。途中、にわかの腹痛などで大きく遅れ、思い通りの成績を上げられずに次の選手にバトンを渡すときなど、号泣とともにその場に崩れる姿が何度もカメラの前に映し出される。

それも充実した陸上運動部生活であり、後で振り返れば良い想い出になるとは思う。また、厳しい練習で肉体と精神を鍛え上げ、本番に臨まねばなかなか勝てないというのも事実だ。

だが、もう少しゆとりのある選手生活を送らせてもいいのではないか、と感ずることもしばしばだ。歴代の先輩や監督、先生のやり方を踏襲して、がんじがらめに部員を管理するから、部員にとって暗い運動部生活になりがちである。それはどうか、と思うのだ。

これは駅伝などの陸上選手だけではない。体育会系スポーツ部全体に言えることだ。

もちろん、スポーツは気楽にやって優勝できるものではない。原監督は2004年の就任時、大学関係者を前に「10年で優勝を争えるチームにする」と宣言。10年計画で選手つくりに励んだ。「重い玉を転がすイメージ」でいう監督の言葉に、基礎練習で磨き挙げた努力が垣間見える。

エントリー選手にも1万メートルのトラック競技の持ちタイムで全国でもトップクラスの学生がたくさんいる。全国クラスの優秀な高卒を10年がかりで集めたのも確かだろう。
 
しかし、原監督は練習のメニューづくりで選手の自主性を重んじ、各人の特徴や体調に沿った目標管理を徹底させて底上げを図ったという。こうした監督の方針が高校生に伝わり、有望な選手が入部するようになった面も大きいようだ。

スポーツでも、芸術でも、そして学問、ビジネス、政治でも、有名大学(出身者)が活躍するのはそれで良いが、つねに彼らが上位を独占するのは面白くない。また、それだと、その世界の活力を弱める懸念も大きい。

その意味で青学の活躍に拍手を送りたい。

政治の世界では現内閣も成蹊大学出身の安倍晋三氏が総理大臣、学習院出身の麻生太郎氏が副総理(元総理)、法政大学卒業の菅義偉氏が官房長官と、東京大学、京都大学などの銘柄大学ではない学歴の政治家が担っている。

学問の世界でも徳島大学出身の中村修二氏がノーベル賞を受賞するなど、有名大学以外から受賞者が出るようになった。ビジネス界でははるか昔の松下幸之助氏の時代から学歴無用の逸材が多数、活躍している。

銘柄大学出身者は現内閣の政治家が失敗したりするとすぐに、「ほれ、見ろ」と陰で手を叩いて、溜飲を下げがちだ。暗いと言うしかない。チャラい性格の方がはるかにましである。


編集部より:この記事は井本省吾氏のブログ「鎌倉橋残日録 ~ 井本省吾のOB記者日誌」2015年1月5日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった井本氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方は鎌倉橋残日録 ~ 井本省吾のOB記者日誌をご覧ください。

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