マクドナルドのハンバーガーは危ないの?

池田 信夫

日本マクドナルドが史上最大の赤字決算になりました。この一つの原因は、去年から次々に報道された「異物混入騒動」ですが、マクドナルドのハンバーガーにはそんなにたくさん異物が入ってるんでしょうか?


今のところ他のハンバーガーショップに比べてマクドナルドの商品に多くの異物が入っているという統計データはありません。ハンバーガーは店の中でつくっているので、ビニールや金属が混じったものがたまにあるでしょうが、よい子のみなさんがそれを食べることはまず考えられません。

ではなぜマスコミはマクドナルドだけに大騒ぎするんでしょうか?

それはおもしろいからです。町のパン屋さんのパンに異物が入っていてもニュースにはなりませんが、マクドナルドは有名なので、ニュースになります。マクドナルドは1日に500万個ぐらい売れるので、100万個のうち1個に異物があっても、1日に5個は見つかります。

しかしよい子のみなさんがハンバーガーを食べて針を飲み込む確率が1/100万だとすると、1日3個ずつ食べても事故にあうのは1000年に1度です。みなさんの考えるべきなのはハンバーガーが危ないかどうかではなく、こういう確率をかけたリスクなのです。

リスクはゼロにはできないし、ゼロにする必要もありません。ハンバーガーのリスクをゼロにしようとしたら、半導体のようなクリーンルームで製造して密封して売る必要がありますが、そんなことをしたら、1個1000円以上になってだれも買わなくなるでしょう。

でもマスコミはそういうリスクとコストのバランスを考えないで、「マクドナルドのハンバーガーに異物が入っている」というニュースが話題になると、そういうネタをさがします。さがせば一定の確率で異物はみつかるので、それが話題になると…という悪循環で、大きなニュースになってしまうのです。

これがハンバーガーぐらいならマスコミもしばらくすると飽きるのですが、原発のように大きな問題だと錯覚がいつまでも続きます。「大きな原発事故が起こると人が死ぬリスクがある」というのは本当ですが、その死者は過去50年間に全世界で60人。1年に1人ぐらいです。原発事故で人が死ぬ確率は、ハンバーガーを食べて死ぬ確率より低いのです。

でもマスコミの人は、確率なんか興味がありません。彼らにとっては、珍しい(確率の低い)事件ほどニュース価値は大きいからです。それは彼らのビジネスとしては当たり前なのですが、みなさんにとって大事なことは逆です。マスコミにだまされない「メディア・リテラシー」を子供のころから身につけましょう。