3年ぶりに韓国のNAVER本社とYLABに行ってきた --- 中村 伊知哉

アゴラ

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NAVER。LINEの親会社。ソウルの本社に3年ぶりに来ました。
NAVERの社長室にわがゼミ出身のハン・ソクジュさんがいるのでレクを受けました。


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韓国では検索シェア8割(Googleは3%)。売上2300億円、PV月270億。巨人です。韓国ではNAVERの検索上どう表示されるかが企業・商品にとっても政治家にとっても死活問題。そのパワーはアメリカでのGoogleの比ではありません。ハングルのデータは全部NAVERに集約するというのが対Google戦略で、巨大データセンターを作っています。

「NAVERに政府の支援はありません。逆にGoogleを規制できずNAVERは規制されています。」 
これは日本政府による日本企業と米国企業への対応と類似してます。日韓連携を考えたいところです。

「NAVERマンガは15万人の作品応募があり、デビューできるのは200人。バリアーは低いが競争は激しい。うち7割程度が映画・ドラマ化されます。収益はNAVERは取らず全て作家に還元します。プラットフォームであって、コンテンツ事業ではないんです。」

スゴい。3年前に訪れたときの驚きをブログに書きましたが、その快進撃は続いているようです。プロ、アマ、ファンのプラットフォームによるビジネス。
スゴい! NAVERのウェブマンガ

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「子会社LINEは5.6億ユーザ。NYにも店舗をオープン。PC検索からモバイルコミュニケーションへと軸を移しています。」
「日本進出から10年間、NAVERは失敗し続けました。でも、李海珍氏がオーナー創業者としてあきらめませんでした。ようやくLINEが成功しました。3/11でも撤退せず、李氏が日本に居残り、2-30名の開発者が家にも帰れず2-3か月集中してできたのがLINEです。」

ふうん。

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「新卒は開発者以外採用しません。各部署に人事権があり、給与もまちまち。1人採用するのに4000人の応募があったりします。平均年齢32歳です。」
これは社員向け情報共有サイネージ。 

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これはデザインとIT書による素敵な図書館。
社員3000人中デザイナーが200人で、その意向に沿うものですが、住民に開かれていて、賑わっています。
NAVERはIT専門家と起業家を育成する教育機関NHN Nextも設立、年120人が無料で受講しているといいます。

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さて、以前のブログでも言及したマンガ原作者であり、メディア開拓者、そしてKMD博士課程在籍中のユン・イナンさん。そのオフィス、YLABも訪問。

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今ユンさん原作のマンガを映画化した「ファッションキング」が上映中なのです。

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ユンさんは原作を新人マンガ家に与え、日本では紙のマンガ、韓国ではNAVERのウェブマンガを同時連載するスゴいシステムを構築しているのですが、そのモデルも一層進化してます。
今NAVERで週5本!連載中。来年は2本が映画化されるとのこと。

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以前はユンさんがネームまで作って日本の編集者と協議していたが、今はシナリオ、ネームの専門家を入れ、作画をマンガ家に振るという分業態勢とか。

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タップすることでコマ送りされるスマホ向けのマンガも開発。
スクロール、スワイプ型と違い、独特の緊張感が生まれる。
新しい表現様式を生んでいます。

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スマホで絵コンテ、ネームをペン描きして、作家に送って描かせるんですと。
やりとりは3年前はSkypeと言ってましたが、今は全部LINEですと。

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韓国の王としもべの会話をLINEの対話形式で物語にする企画が大詰めとか。
これまたイノベーティブ。
ユンさんはKMD一のメディア・イノベーターです。


編集部より:このブログは「中村伊知哉氏のブログ」2015年2月26日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はIchiya Nakamuraをご覧ください。