ヒラリークリントンの大統領選に向けた5つのハードル

岡本 裕明

ヒラリークリントン氏が4月12日にも次期大統領選への出馬表明を行うと報道されています。クリントン氏の知名度は抜群で夫婦そろっての大統領、女性初の大統領となれば話題性も十分でありますが、その道は相当険しいものになりそうな気配があります。


まず、民主党は現時点でクリントン氏以外有力対抗馬がいないとされています。まだ長丁場ですから必ず誰か出てくると思いますが、前回の大統領選の際、オバマ大統領との一騎打ちで完敗したリベンジだとすればクリントン氏は少なくとも民主党内では絶対に負けるわけにはいきません。

しかし、仮に民主党の代表となったとしてもあまりにも多くの向かい風の中、果たしてどのような戦略に出るのか、注目されます。

ハードルの第一点はオバマ大統領が残した民主党への「期待外れ感」を政党としてどう挽回するのか、読みにくいという事です。長期政策として何を打ち出すのか、また2016年の大統領選たけなわの際に経済状況がどうなっているのか、予想を立てたうえでの選挙戦略となるはずですが、今の経済環境からは経済格差は更に開くと思われ、格差是正にどう取り組むかが民主党としての最大のセールスポイントになりそうです。

ハードル二点目はクリントン氏はアメリカは世界の警官であるべきとする戦略を本気で貫き通すのか、であります。クリントン氏が2013年に国務長官を離任した際、オバマ大統領に宛てた親書には警官であるべきとする記載があります。オバマ外交政策と全く相反しているわけですが仮に大統領になったら彼女はどうするつもりなのでしょうか?特に共和党の茶会派も小さい政府を目指している中でクリントン氏の主張は外交のオールドスタイルとも指摘されそうで、ここが国民を巻き込んだ論争になりそうです。特にイスラムと中東和平が絡んできますから要注目でありましょう。またユダヤの信任とイスラエルとの関係回復をどうするのかも当然ながら織り込まれてきます。

ハードル三点目は「クリントン氏の本当の人気や如何に」であります。彼女のポイントを上げたのはビルの不倫スキャンダルに対する対応あたりからです。ヒラリーという個人の能力、大統領であるビルへの支え、そしてスキャンダルの処理でありましたが、見方を変えればこの夫婦は本当にアメリカの絵にかいたような家族愛に満ち溢れた関係なのだろうか、と疑念を持っている人は多いのであります。それゆえに仮面夫婦といわれるのでしょう。

ハードル四点目はクリントン氏の健康状態。2012年末に脳血栓で入院していますが、大統領となる人は激務であるゆえにその真の状態は興味あるところでしょう。特にアメリカではルーズベルト大統領が1945年4月という終戦間際の今思えば歴史の最も大事な時に脳卒中で死亡したことから当然注目される事象であります。

ハードル五点目は共和党からの執拗な攻めをかわせるのか、であります。私的メール事件が話題になっていますが、これはジャブの可能性があります。選挙戦が本格化した時、取り上げられるとされるのがベンガジ事件となりそうです。

これは2012年にリビアのベンガジでアメリカの領事館がテロに襲撃され、出張中の大使以下4名が殺害された事件であります。この事件が偶発的なものではなく、危険が察知されたにもかかわらず、ホワイトハウスはオバマ大統領の第二期の選挙で忙殺されていた時期もあり、何らかの判断ミスがあったのではないかとされています。クリントン氏はこれも理由で国防長官を退任しています。

このベンガジ事件は不思議とマスコミの話題になっていないとされていますが共和党の有力議員ガウディ氏が調査委員会を指揮しており、この調査報告が大統領選の最中に出てくるのではないかとされています。これがクリントン氏にとって致命的であれば大統領選は極めて不利に展開するとみられています。

これらを考え合わせるとクリントン氏には国民的人気があるとされる半面、弱点も相当多く、民主党としてクリントン氏と実力伯仲する対抗馬は絶対に立てる必要があると思われます。共和党からは誰が出てくるのか分かりませんがいわゆる典型的なアメリカ人であるWASPとなれば対立軸は共和党の伝統的アメリカらしさ対民主党のアメリカンウーマンの戦いという国民が最も盛り上がる組み合わせになるのでしょう。

アメリカの将来、そして世界の中のアメリカを占う意味でも興味深い選挙となることは確実といえそうです。

今日はこのぐらいにしておきましょう。

岡本裕明 ブログ 外から見る日本 見られる日本人 4月12日付より