目指せ、持てる能力を絞り出す経営

2015年05月01日 09:58

日経平均2万円の時代を再び迎え、「失われた時代」とは完全に離別してきました。この原動力は政権交代、力強い安倍首相のリーダーシップ、日銀の強力な金融緩和、外国人旅行者の増大など政策的な援助があったことは確かでありますが、企業経営に変化があることも見逃せません。それはROEといった経営効率の追求であります。


「失われた20年」の時、モノが売れず、企業は安売り競争の波に飲み込まれました。その頃、メディアを通じて盛んに言われたのは業界のシェアNo.1だけが勝者でNo.2で辛うじて生き残れ、No.3以下は敗者として市場からの退場とまでいわれました。何故No.3ではダメなのかといえば薄利多売により赤字であったことが最大の理由でありましょう。

ところが、企業経営のスタイルが大きく変化する中で私が感じた最大の衝撃は富士重工の利益率が前期13.6%、今期も高水準を維持し、トヨタを凌駕したことではないかと思います。かつて自動車業界は○○万台クラブと称し、上位の5社とか7社、日本は3社程度しか生き残れないと多くの専門家が指摘し、規模の追求に走りました。それを受けて、ヨーロッパではフォルックスワーゲンがポルシェ、アウディを始め多くの優良な自動車企業を抱えることで一大帝国を築き上げました。

アメリカではリーマンショックでGM、旧クライスラーが倒産するなど激震が走る中、世界の自動車業界は本当に再編するのではないか、と思われました。日本でもホンダが「クラブメンバー」に固執したばかりに経営や決算に大きなショックが走ったのはご存知の通りかと思います。

そのきっかけとなる思わぬ伏兵はテスラではなかったでしょうか?自動車のメッカであるデトロイトではなく、カリフォルニアのITの最先端の地から生まれたその経営スタイルはアメリカらしい常識の破り方でした。これが意味するものは規模の追求が全てではないかもしれないという大きな疑問を投げかけたともいえましょう。

富士重工は水平対向エンジンやシンメトリカルAWDといった独自の車を作り続けてきました。それが花咲いた時、びっくりするほどの利益率というおまけがついてきたともいえます。トヨタが工場を3年間増設しないと決めた一つの理由は規模の拡大から質の向上への変化だったと断言できます。質とはお客様にいかに満足してもらえるか、そして、お客様にいかに喜んで買ってもらえるかという目線の変化でもあります。その結果、価格追求から質の追求へと変化し、利益率の向上に結びついているともいえます。

経営効率の追求とは大企業ばかりではなく個人事業主こそ見直さなくてはいけないものであります。例えばシャッター街となった商店街の元店主たち。そこにはある不思議があります。お店を出したいので店舗スペースを貸してほしいという若い起業家に対して元店主は「住宅とくっついているから貸せないよ」と答えるケースが多いのです。確かに元商店主にとって空きスペースを貸すためのハードルは高く、初期投資も必要です。が、それを乗り越えれば持てる資産を有効活用でき、立派な家賃収入が得られるのです。これは立派な個人資産の効率運用です。

私はカナダの駐車場事業では十分なリターンを得られなかったスペースにさまざまな工夫やマーケティングを施し、今や収益構造のセグメントでは三番目に大きなものとなりました。それは稼げる能力を発掘し、更に伸ばすことを目指しているのです。

あるいは当社のマリーナ事業。この2年ほど収益が頭打ちとなっています。既に一杯となっているマリーナ施設からはこれ以上収益は上がらないとマネージャーは主張しますが、私は何か全く違う切り口があるはず、と考えています。それは賃料を取るだけのビジネスモデルから付加価値のサービスを提供するビジネスを生み出し、あそこのマリーナならでは、あるいはあの駐車場に停まればといったマーケティングを作り出すことであります。

日本が20年間、眠り続けていたのは守りの経営であったからであります。前例主義がはびこり、新しい挑戦を忘れてしまいました。吉野家がアメリカ産牛肉にこだわった結果、一時期大きく売り上げを落としました。その結果、豚丼という新たな商品を投入せざるを得なくなったのは今となっては非常に良い経験でありました。その吉野家、このところ業績も回復気味でチョイ飲み屋を展開させています。それは吉野家でもつ他の飲食部門との仕入れの提携でありました。つまり持てる資産の切り口を縦から横に仕切り直したともいえるのです。

お客様に喜んでもらえ、且つ利益に繋がるこのアイディアこそ、日本全体が豊かになる方法であります。日本には沢山の遊休資産が眠っていて十分に経済的価値を生み出していないものがまだまだ多く存在します。

そこに少し気がついた企業や事業主が殻を破れば日本は新たなる繁栄を築くことができるはずです。皆さんの周りにそんなものがあるのではないでしょうか?

今日はこのぐらいにしておきましょう。

岡本裕明 ブログ 外から見る日本 見られる日本人 5月1日付より

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